東京武偵高校には、飛び抜けて優秀な生徒ばかりが勢ぞろい。
皆、将来を有望視され、彼らが成人した時犯罪数は激変し、平和な社会が訪れるだろうとされているが

中には、飛び抜けて向いていない生徒もいる。



「先導!!石田!!小茂井!!また遅刻か!」
「「「すっ・・・すいません・・・」」」

右から目つきの悪い長身の男。
隣には青い髪の女の子。
その隣には丸眼鏡の男の子と並んで教師から説教をされている。

クラスメイトの前で、怒鳴られてふらふらと三人は席に座る。
三人の成績は最低ランク『Fクラス』、学科共通の学問を既遂の高校生としての学ぶために違う学部が顔合わせする数少ない場である。

「また、あの三人よ」
「いい加減に教養学部〈コルト〉に行って普通の高校生すればいいのに」

ひそひそと、周りの生徒達が話をしている。
恥ずかしそうに
蒼い髪の少女、落ちこぼれの万年Fランク探偵学部〈インケスタ〉先導アイチは教科書で顔を隠す。
もう一人の長身男、武偵1の不良でCランク、強襲学部〈アサルト〉石田ナオキは開き直っている。

最後の一人、真ん丸眼鏡のおかっぱのCランクで通信学部〈コネクト〉の隠れた秀才とされる小茂井シンゴは
切り替えが早いのか、教師の授業に早くも飽きてきたのか机の下で携帯いじり。

この三人は現在、Sランクの生徒のミッションをしていると噂が流れているとか。




昼休みとなり、アイチはランチボックスを手にして机から立ち上がる。
誰かと待ち合わせをしているようだ、そこへ藤色の長い髪も美人にしてAランクにして特殊捜査研究科の戸倉ミサキが話しかけてきた。

「アイチ、最近・・夜中こっそりでかけているようだけど・・・何をしているの?」
「べっ・・別に何もしてないよ!!」

家族全員にモロばれている、夜のお遊び。
妹の追及から、今日も逃れたとは思ったがその妹がミサキに相談したのだ。

「まぁ・・・あんたのことだから男と遊ぶなんてことはないけど・・・というか・・・相手が殺されるし」
「・・・?なんで殺されるんですか?」
「知らなくていいこともあるわ」

危険なことを男二人としているだけでも、半殺しレベルだが今のところは生きているので
安全ラインらしいが、アイチみたいな無害無知無警戒をいつまでも夜の街で遊ばせるのは危険だ。

「大丈夫ですっ・・・僕約束があるので!!」
冷や汗を流しながら教室を出るアイチ、手にはランチのお弁当の入ったミニバック。
話をしていたせいか、いつもより到着に遅れて相手は怒っているのかと考えながら歩いていたせいで

前をよく見てなかったのか、ぶつかってしまった。

「わぷっ!」
「おっと」

尻もちをついて、倒れてしまったアイチ。
顔を上げて真っ青になった、ぶつかった相手は東京武偵高校始まって以来の天才と言われた
赤髪長髪の超美形にして、最高ランクSの探偵学部〈インケスタ〉雀ヶ森レン。

「ちょっと、前を見て走りなさいよ!!」
パートナーの鳴海アサカは、強襲学部ではAランクの生徒でしかも美人、同じような髪の色なのにいつも差を感じている。
後ろにいるのは一見恐そうな新城テツ、強襲学部でいつも重火器を平気で扱っているが

無表情のまま、親切にも転がったアイチのランチバックを拾うと渡してくれた。

「あっ・・ありがとうございます」
「怪我はありませんか?アイチ君に怪我をさせたら『彼』に怒られてしまいますからね」

にこにこと天然的な笑顔をしているが、教務部〈マスターズ〉が通常行う依頼すらもこなしているとか。
手を差し伸べて、起き上がらせてくれただけでなくアイチの服を払ってくれて、とてもいい人だ。

「ところで『彼』との約束は・・」
「あっ・・いけない・・!!すいませんでした!!」

勢いよく頭を下げると、その横をすり抜けて目的の場所へと急ぐアイチ。

「アイチ君」
レンに呼ばれて、後ろを振り向くとやっぱりレンはにこにこしながら「また今夜、会いましょう」と言った。
どういう意味かわからないが、とにかく今は約束の場所へ行こうと今度はちゃんと前を見て走る。


やってきたのは裏庭、花壇の中のとある一か所に身体を入れると中を進んでいく。
此処は『彼』が見つけた秘密の場所で、昼寝をする時に使うとかでアイチにだけ教えてくれた。

アイチのお尻が完全になくなると、後をつけていた女子生徒達が現れる。

「此処ね・・・隠れて彼と二人っきりで食事だなんて許せないわ!」
「そうね、落ちこぼれのくせになんでレン様と同じくSランクの彼が・・・とにかく私達も行くわよ!!」

花壇の奥にある場所へ、同じところに体を突っ込もうとした時、数人女子を止めた。

「やめとけって」
「みっ・・・三和君!」

木の上から警告てきたのは、彼のパートナーにして兵站学部〈ロジ)のAランクの三和タイシ。
手にはあんぱんがあり、もう片方にはミニサイズのイチゴジュースを飲みながら忠告。

「あいつだって、同じ手は喰わないっていうか・・俺でも入れないぜーー・・よく見とけ」
ぽいっと、空になったイチゴジュースのパックを投げると、自動認識で何かが発射されて、パックを貫通、パチンコ玉ほどの穴が空いた。

女子生徒は小さく悲鳴を上げた、どうやらアイチ以外が通ろうとすると発砲する仕組みになっているらしい。
以前、アイチの後をつけて強引に彼とランチしたことに、彼が腹を立てた結果だが、やり過ぎだと同じく邪魔した三和は軽く笑う。

「逢瀬の時間を邪魔すると、あとが怖いぜー

彼は根に持つ、かなり根に持つ。
身体は良い体格しているのに、器が小さすぎるぜと思いつつ、バラ園入口を見ながら、あんぱんをかじる。

そんなこととは知らず、緑のトンネルを進んでいると一本の木を中心とした場所へ到着。
庭を作る上で、ミスがあったと前にランチに割りこんできた三和が教えてくれた、木の下にはすでに彼がいた。

木の下で座り、腕を組んでいるのは亜麻色の髪の男。
レンと同じくSランクの強襲学部〈アサルト〉所属、櫂トシキだ。

アイチが来ると、瞳を開けてこちらを見た。

「ごっ・・ごめん。遅くなっちゃって・・・・」
「・・・・大した時間じゃない」

ぺたんっと、近くに座ると櫂もシンプルな弁当箱を開けた。
中にはまるで料理人が作ったような品々の数々、全て自分で作ったというのだから驚きだ、櫂は幼くて両親を亡くしたと

複雑な事情を抱えており、今は一人で暮らしているとか。

「相変わらず美味しそうだね、そのお弁当」
「・・・普通だ」

あまり口数の少ない櫂、ほとんどしゃべるのはアイチで櫂は時々返事をするだけ。
黙々とランチを食べ終えると櫂は毎日アイチのために食後のデザートを用意してくれており、保冷バックからシュークリームを取り出した。

「やる」
「ありがとうっ・・・いつも」
「・・・別に、何となく作りたくなって作っただけだ」

三和が此処にいれば、ツンデレめ!!というだろう。
パートナーの彼は生憎此処にはいない、クリ―ムを頬につけながら食べていると。

「お前、最近夜に出かけるそうじゃないか?」
「うっ・・!!ちょっと・・探偵学部〈インケスタ〉の関係で、危ないことはしてないよ!!ナオキ君もシンゴ君も一緒だし平気だよ」

自分以外の男子の名が出た途端に、櫂は眉間に皺が寄る、彼はアイチが櫂以外を頼ることがあまり好きではないようだ。

心が狭い上に、ツンデレだった。





夜になり、こっそりと危なそうな動きで家の窓から、外へ。
パーカーを着て、夜の街を走ると待ち合わせの場所にナオキとシンゴがすでに到着していた。

「来たか、アイチ」
「行こうか」
「そうですね」

三人が向かった場所、夜の東京。
最近東京を騒がしている、『AL4』と呼ばれるギャング集団、暴力団や反社会勢力を次々に潰しているのはいいが方法が過激すぎて
問題になっており、近々武偵に依頼がくるであろう犯罪集団である。

「見つけたぞ!」
屋上で、アイチ達はAL4を発見。

黒いコートに、サングラスをかけた赤い髪の男と、まるでサーカスのエースのような派手な衣装の女に
大柄なスーツ姿の男、間違いないAL4だ。

きっかけはAL4の一人、矢作キョウをアイチが偶然に捕まえた事だ。
彼からリーダーが東京から犯罪を消すために、東京を影から支配するという計画を聞いてしまったこと。

ナオキ達も、その話を聞いて驚いている間にキョウを逃してしまい
責任とそんな計画を知り、Sランクでも手に負えないとされるAL4を今日も追いかけているのだけど・・いつもいつも・・。

「今日こそ、お縄にかけてみせます!」
「・・・様、此処は私が」

ピシリッとムチを振るう女だが、リーダーの男が手で制する。
彼女の相手は自分がすると無言の言葉に、女は後ろへと下がった。

「いくぜ!!」
底なし体力のあるナオキがテツに殴り掛かるが、軽く交されてしまう。
戦闘向けではないシンゴは、素早い身のこなしでどうにか逃げるが、すでに半泣きである。

しかし、意外にすばしっこさに女は舌打ちしつつ、ムチを振る。


「覚悟!!」
アイチが手にしたのは、警棒だが男の持つ拳銃で弾かれて、屋上の隅へ。
拾おうとしたが男が鼻先まで接近しており、サングラスの奥の瞳を細めると極悪非道な手段に出る!!




「いたひ・・はなひてくたしゃい」
「相変わらず、アイチ君のぽっべは柔らかいですねぇ・・」

両頬をめいいっぱいひっぱられているアイチ、涙目である。
相手の男はそれはそれは楽しそうに笑いながら、アイチのほっぺを引っ張り続けているが、酷い時には下敷きを取り出して
青い髪を逆立てて遊ばれるという、小学生低学年クラスのいじわるをされるのだ。


「いい加減にしろ・・・」
呆れたようにナオキの攻撃を避けつつ、大柄な男は呆れたように男にさっさと行こうと言うが男は「もうちょっとvv」などと言っているが。



そろそろ、『旦那』がキレ始めるころだ。


「アイチ君の唇可愛いですね、キスしちゃいますか?」
「ふえええっ!!」

「レッ・・・レンさっ・・!!じゃなくて、この悪女!!」
セーラー●ーンのつけいるようなゴーグルをつけた女は、つい男の正体を言いかけてしまうほどのパニックに。
足の下には伸びて目をまわしているシンゴが。

顎をがっちりつかまれて、腰まで手を回されて男の顔が近づいていく。
唇をロックされて、アイチは顔を真っ赤にしてパニック状態、赤い髪にシューティングタイプの黒いサングラスだが
まるでモデルのような容姿が近づいていくが、ふと何処かで見たような気がする。

キインッ!!

あと少しで、唇が触れるところで男のサングラスが吹っ飛ぶ。
前髪が瞳を隠したせいで、素顔を見るチャンスだったが男は・・・レンは大きなその手でアイチの目を隠す。

「来ましたか、相変わらず良い腕ですね」
スペアのサングラスを取り出し、ビルを渡り、走りながら発砲してくる黒コートの男、櫂を見た。
狙いはレンだ、アイチに当てることはないがそれでもレンは離れると素早い身のこなしで弾を全て交していくが
弾切れになると、櫂は空中で弾を入れ替えるというありえない方法であっという間にレンの元へ。

彼もまた、シューティング用のサングラスで顔を隠している。
拳銃で再びレンを狙うがムチを使う女・・・−−アサカが割り込んできたが、大型のダガーでムチを切れ落し、そのままレンへと刃を向けた。

「コワイコワイ」
小太刀二つを取り出すと、ダガーを受け取るが二刀流でも櫂の剣一本を受け止めるのはキツイ。
滅多に本気で戦わない櫂で、模擬戦でも此処までは出さなかった。

「僕とアイチ君の楽しい時間を邪魔しないでいただけますか?櫂」
戦いながら、アイチには聞こえない声の音量で話をするが、いつもいいところでこうして邪魔をされて
犯罪集団潰しもそろそろ飽きてきた頃で、アイチ弄りが最近楽してたまらないというのに
遠くで長距離ライフル手にしてガードしている旦那が、スキンシップの度が過ぎると殺す勢いで斬りつけてくるのだから困ったものだ。

「黙れ、殺すぞ」
常人にはもはや、目で追うこともできないスピードで斬りつけあう櫂とレン。
互いに距離を取ったところでレンは二人を連れて、去っていく、同じチーム『フーファイター』同士で争うのは楽しいが損しかない。

ナイフを収めると、アイチ達に背を向けたままでいると。

「・・あっ・・あの・・いつもありがとうございました」
毎回、こうして助けてくれる、というか櫂だと気付いていない三人。

アイチは躓いて転びそうになった時に、手を引いてくれたり。
援助交際待ちと勘違いされた親父を半殺しにして助けてくれたりと、大変恩のある人である。

「・・・・もう、こんなとこは止めておけ、身の程を知るべきだ」
櫂曰く、別にレンが暇つぶしに犯罪集団しようが大して興味はない。
世界から悪が少しだけ消える程度、世界から悪が消えるなど人類が絶滅する以外ありえないと考えているからだ。

「そうですけどっ・・でもっ・・・いくら悪人でも・・ちゃんと正攻法で捕まえるべきだって・・思うんです!!」
涙目で、被害者達はAL4に感謝もしている。
アイチだって最初はそう思っていたけど、やはりいけないことなんだとアイチはそう思っている。

言うだけの力も、貫く信念も足りないけど、それでも・・。


「勝手にしろ」
背を向けて、櫂はそのまま背を向けて姿を消した。







東京武偵のとある特別室、Sランクのダブルエース『AL4』に与えられた部屋で優雅にレンはコーヒーを飲みながら
窓近くでノートパソコンを操作している櫂に話しかけた。

「あーあ・・・アイチ君とキスしたかったなぁ・・まだ櫂はキスもしてないでしょうね?」
にたりと、笑いながら櫂を見た。
パソコンを動かすキーボードを動かす手が止まり、掛けていた眼鏡を外す。



「生憎だが、ファーストキスはすでに1歳の俺が奪った、セカンドキスは2歳の時だ。
さらに言うなら、あいつの処女も俺が貰う予定だから、お前にやるものなんて米粒一粒もない」
「えぇーー・・・・」

彼が熱心にみていたページ、ブライダル関係のサイトでアイチに似合うドレスをチェックしたがやはりオーダーメイドを検討している。

コーラを飲んでいたキョウ(自力で脱獄した)が会話を聞いて派手にコーラを噴き出し
器官に入ったのか咽込んでいる。

「えー・・んじゃ、離婚したら僕が代わりに」
「そんなこと、地球が崩壊してもありえない」

「いや・・お前の方が・・・ありえないというか・・・・」

一つ、間違えなくてもヤンデレストーカーだとキョウは櫂を見た。






才能溢れたレンと櫂に好かれて、別の意味でSランクだとテツは窓から、アイチは今日も眠そうなしながら登校してきた。

















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