「・・・・櫂君?・・・」
ぼんやりと、目を開けるとダブルベツトに横にされていた。
服は着替えさせられていて、櫂が膝枕をして、青い綺麗な髪をずっと撫でてくれている。
「起きたか?・・・もう少ししたら帰るぞ。今日はもう寝ていろ」
「うん・・・ゴメン・・」
お言葉に甘えて、アイチは眠ることにした。
空はオレンジ色に染まり、一日が終わろうとしていた。
ふと、アイチ自身でもわからかったが櫂と出会った時のことを思い出していた。
先導家は、そこそこ大きな会社を経営する一家だった。
両親はアイチの将来を束縛せずに、いざとなったら会社は社内の人間に継がせるとさえも考えてくれている良き両親。
しかし・・・両親は自動車事故に巻き込まれ・・・二人とも亡くなってしまった。
棺に縋りついて泣くのは、幼稚園を卒業したばかりのエミ。
まだ高校3年生だったアイチは呆然と、葬式に参加しており、これからどうすればいいのかわからなかった。
親戚は遠縁しかおらず、会社は?これからの生活は?
子供のアイチにわかるはずもなく、社長は社内で勝手に決められれば、もう会社とは無関係だと
豪邸は会社のモノだと理不尽に追い出されて、二人は暮らす家も、両親の遺産も受け取ることはできなかった。
酷い仕打ちに泣いている暇などない、アイチにはまだ幼いエミがいる。
本当は大学に行く予定のアイチは、アルバイトをしながらエミを養う。
あと少し我慢すれば、社会人になれる。
そうすれば社会人になって、少なくとも今よりも楽な暮らし得られる。
唯一援助してくれているミサキの援助を受けなくても済むと、汗水流して頑張っていると
ある日TVにとんでもないニュースが流れた。
『先導カンパニーが多額の負債を抱えて、倒産の危機』と。
「・・・・アイチ・・・」
小さなエミでもわかる、両親が作った会社の危機。
アパートのもらいもののテレビでそのことを知り、エミは不安そうにアイチに近づくと制服のスカートを握る。
でも、もうアイチ達には関係のないことだ、会社を追い出されたのに今更心配する義理はない。
「大丈夫だよ、僕達には何の関係もないんだからね」
安心させるようにアイチは幼稚園で一人残っていたエミをバイトを終えて迎えに行き、手を繋いでマンションへと帰宅する。
そこで、先導カンパニーの重役の一人が待っていた。
「アイチお嬢様・・・」
「貴方・・・・!」
彼はあの時、屋敷からアイチを追い出した者の一人だ。
今更どの面下げてきたと塩でも撒いて、追い出したかったが彼は会社の、両親のことで話があると言ってきた。
「実はわが社の再建を援助してくれるスポンサーが現れまして」
「・・・スポンサー?」
今時、傾き、転覆寸前の会社に融資だなんて変な話だ。
その相手というのは大手の会社フーファイター〈FF〉と呼ばれる企業で、様々な分野で今なお拡大をし続けている会社だ。
「そのCEOが貴方に是非、お会いしたいと」
「・・・・CEO・・・が、ですか?」
確か雀ヶ森レンという、若くして才能に恵まれている、妖しげな容姿と魅力を持った男性。
一度だけパーティーで会った時に感じた印象たが、大して接点もないのにどうしてアイチに会いたがっているのか?
一先ずエミをミサキのところに預けて、役員と共に待ち合わせているというホテルへと向かう。
二人は不安そうにしていたが、話をする間もなく役員に車に押し込まれてしまったアイチ。
(両親のことで話があるって・・・なんだろう?)
事故死にはなっているが、殺人の可能性もあるとしていたが結局殺人に繋がり手がかりはみつからずに事故として片づけられたと。
アイチは、わけもわからないままに彼と共に車に乗り込むと高級ホテルに連れてこられると
スィートルームに案内された。
「いらっしゃい。・・・お久しぶりですね・・・先導アイチ君」
「・・・はい。雀ヶ森さん」
丁寧に頭を下げると、テツとアサカは部屋を後にする。
二人っきりはやはり年頃の娘としては、危機感を感じるがレンは笑みを絶やさない。
「あの・・・先導カンパニーの再建を支援してくれると聞いたのですが・・どうして僕が呼ばれたのですか?」
「はい、実は貴方達を追い出した役員達なんですけどね。
君を差し出すことで、僕が先導の会社を立て直すことを約束してあげました」
レンが最初、何を言っているのかわからなかった。
アイチに此処に来るように言いに来た男は、アイチを人身供養としてレンに差し出してきたと。
「何・・・言って・・・・るんですか・・・・・」
「僕、初めて会った時から、君のことが欲しくて欲しくてたまらなくて」
笑みを崩さずにアイチに近づいていく。
結婚相手にと、あらゆる容姿の女性を紹介され、肉体で迫られても心が揺れ動くことはなかったのに。
『はじめまして、先導アイチです』
青い髪の可愛らしい少女に、レンは心を奪われた。
純真な心の輝きをしている青き瞳、高校生とは思えない華奢な体はまるで小さな花の様。
棘のある、赤々して薔薇の様な美しい女性達は見たことはあったがアイチの様に純真さを持ったまま
大人になりつつある女性は初めてて、レンはどんなことをしてもアイチが欲しくなった。
「僕の花嫁になっていただけますね」
腰を掴んで強引に引き寄せると、水仕事で荒れた手を掴んで軽く、手の甲にキスをする。
「・・・いっ・・・いやっ!!」
レンの身体を力の限り押して、アイチは彼から離れると急いで出口へ。
扉を開けようとアンティークタイプのドアノブを動かすも、ドアはまったく開かない、スィートルームは最上階であり
窓から逃げることはできず、この扉しか出口はない。
震える手で必死に扉を開けようとしていると、後ろからレンがアイチを抱きしめてきた。
「あっ・・・・やめっ・・・・・!」
「大丈夫です、最初は痛いかもしれないですが・・・僕が気持ちよくしてあげますから・・ね?」
逞しい男の手はドアノブからゆっくりとアイチの手を離すと
柔らかな耳たぶを甘噛みすると、アイチは立っていられなくなる。
レンはアイチを抱えると、ベットに横にさせるとすぐに覆いかぶさり
最初の報酬として、ファーストキスをまずはいただくことにした。
愛する人とキスするために、とっておいた唇が一方的に奪われる。
しかも深く、喰われてしまいそうな深いキスに酸素不足となり、抵抗する力は徐々になくなっていく。
着ていたものを全て床に脱ぎ捨てられると、レンはワイシャツのボタンをいくつか外す程度という屈辱な行為からまずは始められた。
可愛らしい獲物を、たっぷりと虐めながら確実に食していく。
手の爪から、足の指までレンに全てを触れられていく、誰も触れさせたこともないような乙女の花園もついに足を踏み入れられ・・・。
「はっ・・・アぁッ!痛っ・・!!いやぁっ!!」
「本当に君は男を誘うのが上手いですね。最初は手加減してあげようと思ったのですがっ・・・我慢できなそうですね」
息を荒くさせながら、レンはアイチの中へ進んでいく。
シーツには処女の奪った証の赤い花びらのような血が付着、泣きじゃくりながらアイチはただレンに翻弄されていた。
「ナカはダメっ・・・・やァっ!!ああっ・・!!やアァッ!!」
何かがアイチの中に放たれた、それは嫌でも理解できる。
強引に処女を奪われただけでなく、将来も奪われたアイチはそのまま気を失った。
目を覚ますと、幸いにもレンの姿はない。
身体は清められて、バスローブの姿のまま、ベットの上に横にさせられている。
「・・・ぃっ・・・!!」
腰と、強引に侵入された場所が痛い。
バスローブの隙間から見えたのは、レンのモノだという赤い印。
「やっ・・・いやぁっ!!」
此処にはいたくない、壁にクリーニングされていた制服を掴み、急いで着替える。
時刻はいつの間にか昼過ぎになっており、携帯の履歴にはミサキからの電話の着信が沢山入っていた。
連絡もなくて心配してくれていたのは電話も何回も掛けてくれていたが何があったかなんて
言えるはずもなく偽って電話する気も起きない。
「これから・・どうすれば・・・・!」
会社の人間達はアイチをレンに差し出して、会社を立て直そうとしている。
すぐに逃げたいところだがレンの力は海外にも十分な力を発揮しており、逃げたところで何処までも追いかけてくるだろう。
「お父さんっ・・・お母さんっ・・・!!」
ベットの上で震えながら今は亡き、両親に助けを求めるほどアイチは追い詰められていた。
机の上に置かれた手紙はさらにアイチを絶望へと叩きつける。
『高校を卒業するまでは僕が生活を援助しましょう。勿論君の妹さんも一緒に。
卒業をしたら僕の屋敷で一緒に暮らして、20歳になったら結婚をしましょう』
真っ暗な未来が、そこには書かれていた。
レンの屋敷など連れていかれたら、もう二度と逃げられない。
一生閉じ込められて、毎日あんなことをさせられて望んでもいない男の子供を孕まさせてしまう。
手紙を掴むとゴミ箱に捨てて、外へ飛び出した。
頼れる相手なんていない。
ミサキにも話せない、このまま死んでしまってもいいかもとさえも思った。
(生きていても・・・幸せなんてない・・・)
将来はレンに蜜を吸われるだけの、鑑賞用の花にされる。
希望も光さえもない未来に、アイチは一人・・・公園のベンチに腰かけていた。
辺りは暗闇に包まれて、日中は子供達で賑わっている公園も今は誰も通る者はいない。
本当に死んでしまいたくなってアイチは、どうやって死のうかと考えていると数人の人間が近づいてきた。
「こんなところにいたんですか・・・・アイチお嬢様」
「・・・貴方達っ・・・!!」
アイチとエミを追い出した会社の役員達。
その中には、レンのところにアイチを送った男もいた。
「雀ヶ森様から、君から目を離すなと言われているんだ。勝手な行動は困るんだよ」
「勝手って・・・貴方達・・・!!」
怒りで言葉が出てない。
人のことを子供だからと言って、追い出しておいて都合の良い時だけ心配して。
「君は雀ヶ森様の大切な花嫁だ。さぁっ・・・来るんだ」
「そうだ、私には家族がいるのに生活がかかっているんだぞ!!君のせいで私の家族に何かあったらどうしてくれるんだ!」
怒りでカッとなって、手を上げたい人の気持ちが今ほどわからない時はない。
彼らは人の姿をしているだけで本当は人じゃない、出なければこんな酷いことするものか。
「離してっ!!」
強引に腕を掴んで、連れて行こうとする。
この場で舌を噛んで死んでやろうかとも思った時だった、二人の間に誰かが入り込んできた。
「やめろ」
「なんだっ・・・お前」
アイチと歳のそれほど離れていないような、若い男。
しかし眼光は鋭く、見つめるだけで並みの大人を圧倒させるほどだ。
特徴なある跳ね方と、亜麻色の髪に緑の瞳。
アイチは彼を知っていた。
「・・・・櫂君?」
小さい頃、とある会社のパーティーで会ったことある男の子だ。