恋する乙女のヴァンガードファイタ―先導アイチ(15)は
今日もカードキャピタルにて、強くなるためデッキの調整を行っていた。

もっと強くなって櫂とまたファイトしたい、強い者だけが彼と戦う資格があり、アイチはまだまだ弱いとその健気さは今時珍しい。

そんな、アイチに遅れて来店した森川がとんでもないお願いごとをする。


「頼む、アイチ!!合コンに行ってくれないか!!」
「・・・合コン・・??」


合コンとは、男女の出会いの場。
しかしながらアイチは行ったこともない未知の集まり、今は出会いよりもファイターとして強くなりたいことを優先したいし
初対面の人間に会うのはどうも緊張するし、知り合いが誰もいないとなると気が引けていると。


「これはただの合コンじゃない!!ヴァンガード合コンだ!!」
「ヴァンガード合コン??」
アイチと向かい合うようにして座っていた井崎が、普通の合コンなら知っているがヴァンガード合コンというのは初めて聞く。

「知らない間に、そんな集まりができたのかーーー・・俺らのヴァンガード合コンしてみな・・・・・」
遠くの席で聞いていた三和が軽く笑いながら、櫂に話しかけたが話しかけられた相手は眉間に皺まで寄せて
中学生組の会話を聞くのに集中している、こういう時の櫂には話しかけない方が良いと三和は知っていたので
そのヴァンカード合コンというものの説明を櫂と同じく、遠くから聞くことに、面白そうだ。

「今やヴァンガードの人気は女子にも浸透し始めているんだぜ、けどルールやデッキの調整を知らない女子は多い。
そこで男子が手取り足取り教え、そして恋人同士になっていくという、彼氏彼女もできる一石二鳥の集まりなんだぜ!!」
「でも、どうして僕が??」

森川の友人が、偶然アイチと二人でいることを目撃して、是非ともお近づきになりたいと頼まれた。
報酬はコーリンの三番くじのレアものポスターだとか、他校の女子のアイチとの接点は唯一ヴァンガードのみで
だったらカードキャピタルに行けばいいと誘ったが友人は。

「お前の空気読めないのは相変わらずだな。俺はまだ燃やされたくないんだ」

とか、誰のことだろうと意味がわからなかった。
燃やす相手とは、付き合っていないという話に友人はこれはチャンスだとヴァンガード合コンに参加してほしいと頼むように言われたのだ。

大体カードキャピタルは、アイチのリアガードが多すぎる。

大人よりも強い小学生ファイターにして、義姉と慕うカムイ。
男以上に凛々しい美人の店員、ミサキ。
頼もしい兄のように慕われているが、腹の内が不明の三和。

そして最大の天敵にしてカードキャピタルにはアイチに目を付けた不貞の輩を燃やす櫂。

これでは、汚れた現実世界に降臨した可憐な天使のアイチにお近づきになれない。
ならば店外ならどうかと友人は考えたが、アイチは少し悩んでいる、これでは森川も報酬のコーリンポスターをゲットできない・・・と。

「知らない奴とファイトするってことは、強くなるための第一歩だぞーーアイチ」
「・・・強く・・・なる!!」

目の色が変わった。
強くなると聞いて、アイチの心は傾き始めている。今日は幸運にもミサキもカムイもいない。

リアガード二人がいない今しかないと、森川の押される形でアイチは合コンに行くことを承諾。

「よっしゃーーー!!これでコーリンちゃんポスターをゲットできるぜ!」
「やっぱり、モノでつられたかーー・・」
呆れたように井崎が笑っていると、アイチの後ろにいる櫂が目線だけで殺せるほどの殺気を放っていた。
それはメールでアイチの参加を伝えている森川に向けられていたがKYな男がそれを感じることなどできずにいる、ある意味凄い。

「おぉ・・、アイチのヴァンガード合コンかーー・・・って、櫂?」
こっそりと覗きに行こうかと考えてると櫂が立ち上がると、アイチ達のいるテーブルへと近づいていくと。

「おい、その合コン俺も参加する」
衝撃の一言が、あのヴァンガードと料理以外に目のくれたことのない櫂が合コンに行きたいなど天変地異が明日起こるのではないか?

「はぁ?なんでお前が」
森川は露骨な嫌そうな顔をする。

「価値のあるファイターに会えるかもしれないからな」
もっともらしいとこ言っているが絶対に嘘だと、井崎も三和も心の中で櫂のウソを見抜いた。
アイチだけは「櫂君、凄い」とか宝石みたいな目を輝かせているが、返信のメールには男子が一人欠席するので森川自身が出てくれと返信がきていたが
コーリン一筋なので、行く気がせず、男子一人分参加しても問題はないのだが櫂のためにメールを打つのがはっきり言うと面倒である。

渋っている森川に櫂はあるものを報酬として出した。

「無論、タダでとは言わない」

何処からか取り出したのは森川のクルティカルトリガー。
新商品PRとして発売したが当てることのできなかったウルトラレアのプロマイド。

「わかった!!参加できるようにしてやるぜ!」
態度が分かりやすいくらいに変わると、合コンに参加できる男子を確保できたとメールを友人に送る。

(櫂君とカードキャピタル以外の場所に行ける・・・)
桃色に頬を染めて、嬉しそうに笑うアイチ。

(参加した奴ら、全員燃やす)
悪い顔で、男子をミディアムにすることがすで運命づけられており、顔にわかりやすいほどに二人は思考は
彼らと親しい中・高校生はすぐにイメージできたという。







「というわけで・・・これよりヴァンガード合コンを・・始めます・・」
力なく、幹事の男は力なく合コン開催を宣言しているが女子達の心はすでに私服姿の櫂に奪われている。
隣には可愛らしい桃色のワンピースを着たアイチが座っており、男子達もお近づきになりたい女子は決定しているが
櫂という超リアガードが完全ガードに入っているため、声を掛けることすらできない。

「合コンか・・僕、初めてなんだ」
今まで人の集まりにはヴァンガード関係以外に参加したく事がなく、確かにヴァンガードは関係しているが
会場は最近できたヴァンガードができる大きめの個室飲食店で、見知らぬファイター達に高まる鼓動にアイチは胸が踊る。

「そうか・・」
見たところ、アイチ以外価値のあるファイターは見た感じいなさそうだ。
ふざけた集まりに参加するような奴らだ、真剣にヴァンガードをしているわけではないのだろう、ならばやることは一つだと。

デッキを取り出した。


「ドラゴニック・オーバードのアタック!!・・・・エターナル・フレイム!!」
「ぐああっ!!」

「キャーッvv櫂君また、勝っちゃったーーー」

恐怖の連勝で、男子ファイターを片っ端から始末にかかる。
櫂に勝ってカッコイイところを見せて女子の興味を引こうしたが櫂は詐欺だ、容姿だけでなくファイターとしても全国大会以上の実力。

「フン、大したことないな」
次の相手は誰かと、鋭い目で睨む櫂に男子はもう泣きそうだ。
女子はというと櫂の背後を取り囲むようにして、騒いでいるが櫂はまったく興味を示さない。

アイチに少しでも話しかけようとする男子がいれば、櫂が立ち塞がりファイトをし、跡形もなく燃やすというのがパターンだ。
そんなこととは知らず、せっかくヴァンガード合コンに来たというのに男子は片っ端から櫂にやられて
女子は櫂の強さに夢中になって自身のファイトどころではなくなっている、その証拠に彼女達のデッキはカバンの中だ。

(櫂君強いから・・・それにカッコイイし・・・)

女子達の隙間から、三和に鬼強と言われた時の悪い顔で櫂は男子を倒していく。
楽しそう?に目の前で櫂がファイトしている姿だけ見れただけでも十分かもしれない、それにカードキャピタルよりも狭い
この空間にいられるなんて初めてて、意識すると緊張して来てしまった。

(僕・・・今、櫂君と同じ空気を吸って・・・僕の馬鹿・・!!変に意識しちゃだめだって・・・!!)
一人で真っ赤になったりして、恥ずかしいとアイチはトイレに行って、顔の火照りを冷やしに行くことにした。
外の空気を吸えば冷静になるだろうと、ドアを開けて一人外へ、ついていくようにもう一人もアイチに続けて外へ出たことに誰も気付いていない。

「ふぅ・・」
持って来た小さめのバックの中からハンカチを取り出して、手を洗う。
鏡に映るアイチの頬は赤くない、どうやら外に出たことで火照りが収まったようで自身の手で触れても温かくない。

「一人で盛り上がってバカみたいだ」
落ち着いたところで、トイレから出ると偶然同じく合コンに来ていた男子と会う。
彼はアイチを狙いの男子だ、森川に頼んで合コンに参加するように頼んできた張本人。

まさか櫂がついてくるとか、イメージ想定外の展開だが、櫂は今ファイトに夢中になっている。
今がチャンスだと、人良さそうな仮面をつけてアイチに近づいていく。

「俺、最近ヴァンガード始めたばかりなんだ。同じ初心者同士いろいろと教え合わない?」
「そうなんですか?僕も同じで・・まだルールもわからないところが多くて」
などと芝居をしているが、ヴァンガードファイター歴は3年くらいあり、真っ赤な嘘。

同じ初心者ということで、警戒心を無くそうとしていたのだ。
アイチは彼を警戒することなく、近づいていき、さりげなく男はアイチの触れようとする。

「此処は騒がしいからさ・・・何処か、別の場所にいかない?」
「別の・・でも・・・」
皆に一言言ってからの方がいいと、返事に迷うアイチ。
だが、男は断る前にアイチを男の思惑へと言葉巧みに誘導する。

「皆、楽しんでいるしさ。少しだけだから大丈夫だよ」
カバンを一緒にこっそりと取りに行って、此処から抜け出そう。
あとは個室のカラオケ程度に行けばあとは密室、手籠めにでもしようかと男は何処からアイチに触れようかと考えていたが。



「ほう、それは楽しそうだな」
「櫂君!」

三和曰く、悪い顔で笑う櫂がいつから聞いていたのか立っていた。
真っ青になる男から、アイチの腕を引くと電話で呼び出しておいた三和に引き渡す。

「目を離すなよ」
「へいへい・・・あーあ・・・俺、何しにきたんだろう・・・」
「????」

アイチのリアガードを昼飯一回分という安さで、引き受けるなんて人が良すぎると溜息をする三和。
邪なことを考えていた男はというと、下心込みで櫂に跡形もなく燃やされたという。


その後、彼の姿を見た者はいないという。







「おい、次だ」
「うげ・・・・、なんで俺ばっかり」


合コンの次の日、櫂は森川にばかりファイトをしていたという。
何も知らないアイチは櫂と一日中ファイトしている森川を羨ましいそうに見ていたとか。


その後、アイチに近寄る男はドラゴニック・オーバーロードもひれ伏す先導者に守られていると
噂となり二度と合コンのお誘いはこなかったという。


三和曰く、さっさと付き合えばいいのにとのことだ。






















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