「かすみ草の銃士 ライサ!」
「雄心の探索者 マーク!」

氷の名をつくクランかと予想したが、エミの友人のマイと同じクランを使うらしい。
しかし、可愛らしい容姿のユニットではあるが、本気のぶつかり合いとファイトを目的に組まれているのなら油断はできない。

「行きますよ、アタック!!」
いつの間にかグレード2へと、ライドされており、敵のユニットの攻撃はアイチに命中。
腕で顔を守りつつ、アイチは前を向いていた。

「正直、意外でした。敵であった櫂トシキの近くにいたファイターが、地球を救った英雄であったことに」
常識で考えるのであれば、敵と味方が戦いの後もこうして近くにいることなど考えにくい。
調べによると、かつては同じチームメイトだったらしい、今はどうかは不明との報告を受けている。

「・・・櫂君は僕を救ってくれた先導者ですから、だから・・僕は負けませんっ!!」
アイチの攻撃をし、セラのダメージポイント4枚まで与えられた。
最初の印象としては、その辺に咲く、名もなき花の雑草というイメージだったが

今の彼はまるで、野原に咲き誇る、アルストロメリアのようだ。


「私達の邪魔はさせませんよ!!これは断罪・・・罪を犯せば罰を受ける、当然の理です!!
並び立て、花の王達よ。その美しさを前にして、敵を恐怖し、永久凍土の如く心を凍てつかせよ!レギオン!!

赤き牡丹の衣服を着た女性騎士、牡丹の銃士 マルティナの隣に似たような衣服を着ているが色の違う牡丹の銃士 トゥーレが降り立つ。




ようやく止まったエレベーターから慌てたように、二人が飛び出す。
すぐに上に階にいるアイチに追い付かなければと階段上りたくないと愚痴をこぼすレンを我がまま言うなと叱りつけて進んでいたが

広いフロアに出ると、待ち構えていたかのようにスーツ姿の男達がデッキを立っている

「休めると思ったのに・・仕方ないですね」
「さっさと蹴散らすぞ・・・!!」

左右に分かれて、ファイター達を撃破。
世界屈指の実力者二人に、彼らでは足止めぐらいしかできなかった。

その様子を一人、ガイヤールはモニターで見ていた。
ネーヴも自室から、少女の方もドーナツを食べながら観戦している。

(奴らでは相手にもならない、やはり僕が出るべきだ・・・しかし・・・)
セラVSアイチのファイトが気になり、もはや勝負のついたレン達を映した映像は消すとモニターを切り替える。
薄暗い室内でパソコン画面に映し出されているのはネオネクタールのレギオンを発動させたセラ。

南米のヴァンガードサーキットチャンピオンであるラウル・セラ。
あの男は強い、アイチでも勝てるかどうか、しかしセラはガイヤールと同じ側にいる人間で普通なセラに勝ってほしいと思うはずなのに
ガイヤールの中ではアイチに負けたくない、むしろ勝ってほしい。

しかし、セラが敗れればガイヤールも出てこざるを得ない。
まだ己の正体をアイチには知られたくない、櫂のいる後江高校に侵入し、櫂の近くに潜り込むのが目的だったはずなのに
行きつけの店で出会ったアイチに心を奪われ、まだあの時のカードキャピタルでの関係でいたかった。


「2人の花の王による、レギオンアタック・・・!!舞え、百花の王よ!!美しくも冷酷な一撃によって、戦いに終止符を打て!!」
「・・・ノーガードッ!!」

高く飛んだ赤と白の牡丹の銃士が、アイチのヴァンガードを傷つける。
そのダメージを感じないのに、強いイメージとなってアイチを襲ってきた。

「うわぁぁっ!!」
「・・・アイチさんっ・・・・・!!」
悲鳴をあげるアイチを、揺れ動く心で観戦していた。
傷つけることが目的のはずなのに、アイチが傷つけられるところを見ていられないと心の揺れは瞳に映し出される。

「これでダメージ5枚目ですか・・・今回の件、見なかったことにしていただけませんか?私も貴方を傷つけることは心苦しい・・」
困り顔を浮かべてセラはアイチにこのまま見て見ぬフリをしろと、勝負はすでに決まったかのように余裕の笑みを浮かべる。

最後の攻撃は一枚とはいえ、ガードされてしまった。
セラの方はリアガードが揃えられており、レギオンを使ってもガードされるのは目に見えている。

「僕は、諦めません!!絶望の中に伸びる一筋の光!!暗闇の中で輝く、勇気という名の光!!シークメイト!!」
このユニットは最初に戦った、今や懐かしきハイピースト『うぃんがる』。
アイチのために本来の力を解放し、現れ出てくれた・・・・その呼び出された言うまでもなく、アイチの分身。

「共に立ち上がれ!!僕の分身、新たなる道を探索する者!!ブラスター・ブレード・探索者をスペリオルコール・・・レギオン!!」

初めて見るアイチの分身に、目を見開くセラ。
モニター越しに見ていたガイヤールも白銀に輝く騎士と、その横には紫色の鬣を持ち、大きな剣を口に加えた獣が横に並ぶ。

「また会えたね・・」
そして、力を貸しに現れてありがとう。
ブラスター・ブレードはアイチへと自然と姿を変える、新たなうぃんがるの姿・・セイクリッド・うぃんがるの頭を撫でると気持ちよさそうに喉を鳴らす。

「さらに爛漫の探索者 セルディックをスペリオルコール!!」
スキルによりプラスパワー3000となり、レギオンを発動させたことにより、リアガードのパワーが増していく。
あえてガードしなかったのは、パワーを上げるためのコストを支払うため、セラのクルティカルを出ないと100%信じなければできない芸当だ。

「共に立ち上がれ、探索者達よ!!僕に力を!!レギオンアタック!!」
セイクリッド・うぃんがると共にブラスター・ブレードが一気に銃士二人に突っ込んで行く。
たじろぐ二人の銃士だが、させないとセラがガードをしてきたが。

「ゲット!!二枚目も・・ヒールトリガー!!」
「連続・・・トリガーだと!」

一枚目はクルティカルトリガーで、二枚目はヒールトリガー。
立て続けにトリガーを引き当てられて、パワーが増した上に一枚回復されてしまう。

「一気に決めます!!」
このまま、セラを倒す。
後からのガードは追加ができない、ダメージ一枚は確実のはず・・・・・・・だった。











「うぐっ・・!!」


後ろから、何者かに口元に布を押し付けられてしまう。
思わず吸い込んでしまったが、即効性の睡眠剤を気化したものだったらしく、アイチの瞼は意志とは無関係に閉じられていく。

『マイ・ヴァンガード!!』
セイクリッド・うぃんがると共に、慌てたように手を伸ばすブラスター・ブレード。
しかしヴァンガードという司令塔を失い、体は透けて消えていく。

身体が倒れる直前に、セラがアイチを受け止めると。

「よくやった、モレス」
黒い執事服に身を包み、メガネをかけ、灰色の髪をした男が丁寧に頭を下げる。
対戦者の意識が失ったことにより、氷のプリズンは自動的に解除されると同時にレンとレオンが入ってきた。

「先導!!」
「アイチ君!!」

意識を失ったアイチがセラに横抱きに抱えられている。
もしや、敗北してジャッジメントという制裁を食らってしまったのか、しかしアイチには傷ついた様子はない。

「返してもらうぞ、先導を」
力ずくでもと、レオンとレンはデッキを構えるがセラは指を鳴らすと、すさまじいブリザードが吹き付けてきた。
反射的に目を閉じてしまった二人だが、PSYクオリアを高めたのか、二人の瞳が虹色に同時に輝くとブリザードを消し飛ばすがセラ達の姿はない。

「追いかけますか・・・?」
「・・悔しいが不利だ、一時退散するべきだ」
目の前にアイチがいたのに、逃がしてしまうなどもっと一歩を早く踏み出すべきだったと後悔するレオン。
後ろの階段から足音が聞こえると、敵の数は予想よりも多く、駆けつけるのもに遅れてしまった。

取り囲むようにして何処から湧いてきたのか多数のファイターが出てきた。

たとえ、二人が世界最強クラスのファイターであろうとも、ビルにいる全てのファイターを相手するには夜が明けてしまう。
アイチ救出のためにも、一時退くべきだ。


「憎悪の地獄で生まれし絆の力、互いを傷つけ、刺し貫く、漆黒の騎士たちの交わり並び立て、並び立てぬ筈の者達よ・・・・!」
「蒼き嵐の名を冠する、誇り高き水軍の将・・・!」

『レギオン!!』

同時にレギオンの力を解放し、黒と白のドラゴンにファイター達は一気に倒され
入口の扉は吹き飛び、後ろ髪は引かれるが矢も得ないと苦しそうに二人はビルを後にした。









温かな、太陽の光。
少しだけ朝の独特の空気の匂いが口から吸いこまれる、それに混じって草花のいい香りもしてきた。

「あれ・・・・」

目を開けるとそこはキングサイズの天蓋付きの豪華なベットの上だ。
これは夢かと思ったが、次第に眠る前の記憶が蘇る。

「そうだ・・僕・・セラさんとファイトしていたけど、後ろから誰かに襲われて・・・」
とにかく、今の状況を確認しようとベットから降りようとしたところで自分の服が最初に着ていた白いジャケットのものではないことに気付いた。

白いきっちりとしたシャツに黒いズボン、近くのハンガーには黒いコートが掛けられている。
まるで王のような衣服に戸惑いながらも肌寒く、着ることにした。

(デッキはっ・・・!!)
幸いにもベット近くの小さな棚の上に置いてあり、胸のあたりに握りしめて安心するように息を吐く。
中身を確認、仲間達は一枚の欠けていないようだと安心すると、白いブーツを履いて慎重に天蓋の薄いカーテンを捲って外へ出る。

「温室みたいな場所なんだ・・・何処なんだろう?」
立凪ビルには、一度改装前に来たことがあるが大分作りが変わってしまっている。
上もガラス張りになっていて、空が透けて見えているが草花が多くて先がよく見えずにいたがようやく、壁の終点に到着した。

外へ出られると、早歩きをするがアイチは茫然とした。
正面の壁は透明ガラスになっていて、おそらくこの部屋ガラスで覆われた温室のような部屋になっていることに。

「でも、何処かに出口があるはずっ・・・」
携帯はいつの間にか取られて、連絡が誰とも取れない。
きっとレン達も、エミも心配しているはずだ。

急いで帰らないと焦るアイチの前にガイヤールが現れた。

「お目覚めですか?アイチさん」
「えっ・・・君は・・ガイヤール君?」

振り向くと、いつもの学生服ではなく白い騎士服のような衣服を着ている。
丁寧にアイチに対し、片方の膝をついて頭を下げられて、戸惑うアイチ。

私服、のようにはとてもじゃないが見えず、囚われているようではなく、警戒しているとガイヤールは安心させるように笑う。

「大丈夫ですよ、此処には貴方に危害を与える者など、一人もいます。誰もが貴方感謝しています。
だって貴方はリンクジョーカーの脅威から世界を救ってくれた救世主なのですから」
「君は・・・一体・・」

「お話の前にお腹が空いたでしょう?今、朝食をお持ちいたします」


嫌いなものはありませんか?

朝食よりも、携帯を返してほしい。
それがアイチの第一の望みだった。








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