「コール!」
リアガードには、五月雨の解放者 ブルーノと小さな解放者 マロンがコールされる。
パーシヴァルがヴァンガードにいる効果では二体のリアガードは、自身をブーストしていく。

「アタックだ!行け、わが分身!!」
手を翳す、パーシヴァルに剣が櫂のチェーンブラスト・ドラゴンを攻撃。
ノーガードで攻撃を受け、ダメージゾーンにカードが溜まるたびに不気味な音がしていく。

「櫂・・・大丈夫かよっ・・」
普通のファイトなら心配ないが、敗者には容赦のないジャッジメントを与えるこのファイト。
もしも負ければ櫂にカードのダメージを与えられてしまう。

「俺のターンだ。ドロー・・・・更なる高みを目指し、天をも焦がす炎柱となれ!リミットブレイク!!」
チェーンブラスト・ドラゴンのリミットブレイクにより、ガイヤールのリアガードが全て退却。
守りが退却したことにより、リアガードの魔竜導師 マコラガはパワープラス5000となる。

ブレイジングフレア・ドラゴンも退却により、パワープラス3000。


「よっしゃっ!!これで櫂の勝利で・・」
「まだ、ファイトは終わってないよ・・・それに、ガイヤールはまだレギオンを使ってこないのが気になる・・・!!」
制裁を与えるのなら、生半端なデッキでプリズンまで作り出すとは考えられない。
次のターンにまで繋げる自信がなければ、すぐにでも使っていたはず、残り手札も少ないがブーストされてもいいように

「剣陣の解放者 イグレーヌ!!クインテットウォール!!」
以前、櫂とアイチファイトで見せた山札から上から5枚をコールしてガードに使う、それによってチェーンブラスト・ドラゴンの攻撃。
リアガードもグレード0に、ブレイジングフレア・ドラゴンも二度目のクインテットウォールによって防がれた。

「一枚もダメージが与えられなかったっ・・・・だと」
まさかの展開のナオキは開いた口を塞ぐことができなかった。
悔しそうにしながらも櫂のターンは終了する。

勝利を確信したかのようにガイヤールは高らかに「ファイナルターン!!」と宣言した。

「偉大なる聖者に祝福を受けし者よ、今此処に並び立て!!・・・シーク・ル・メイト!!・・・レギオン!!」
現れたのはフードを頭に被った少年がコールされて、大地に降り立ち、ガイヤールのレギオンは完成。
パワーは自動的に20000となり、櫂への最後の攻撃が始まる。

退却したはずのリアガードも手札、全てを使ってコールする。
対する櫂は、リミットブレイク発動により手札をコストとして払ってしまい、手札は残り少ない。

さらに王道の解放者ファロンのアタックが成功したため、パワーがプラスされる。


「くっ・・・!!」
「振りかざせ剣よ、まつろわぬ敵を打ち砕け!!レギオンアタック!!」

「ガード!」
守りに使える全てのカードを使う、しかし・・・トリガーチェックが残っている。
もしも、此処でトリガーが出ればガードを貫通されてしまう。

「・・何故、俺を狙う。三和や他の者達・・・それにアイチまで」
「アイチさんは世界を救った救世主。今はカトルナイツの庇護を受けている。
これがどういうことかわかるな・・・・もうアイチさんはお前達のところになど帰る気はないということだ」

勝ち誇ったようにガイヤールは笑う。
あの可憐な容姿から想像もできない、佳麗なアイチには人の上に立ち、導くが相応しい。

「櫂トシキ、お前は自分が何をしたのか・・・忘れたとは言わせないぞっ・・・・!
リンクジョーカーすらも利用し、正気のままに無関係な人々を自分の欲望のために巻き込み・・・


さらにはアイチさんまで見殺しにしようとしたことを!!」



思い出すだけでも、心が突き刺されるようなリンクジョーカー事件。
胸を手で押さえるその姿、ガイヤールの痛みは本物だと、皆がわかる、この場にいる全員が関係者なのだから。

「アイチを?」
ガイヤールは何を言っている、アイチが死にそうだったと。
意味がわからないでいたが、ミサキ達はガイヤールの言っていることに心当たりがあるのか、ハッとした表情をしていた。

「どうしてアイチさんがリバースせず、目の前で現れたのか・・・考えもしなかったのか・・・!
あの人は強い心の強さでリバースを抑え込んでいたんだ、命を落としかねないかもしれなかったのに

なのに、お前はっ!」

あの時、確かに櫂に敗北とリバースが始まっていたのにアイチは正気を保って櫂の前に現れた。
櫂と同じく正気を保てていた、アイチならできると深く考えもせずにレンとの再戦・・・ファイトのことしか頭にはなかった。

苦しそうにタクトとファイトしているのに止めよとも、櫂の代わりにタクトをアイチが倒し
求めていた強い相手、それがアイチだと確信したが


欲望に走り、周りを巻き込む櫂を止めようとしてリバースをされ、それでも立ち上がり櫂の前に現れたアイチを





アイチとの戦いにはもう、興味もないと振り払った。
命を落とすかもしれなかった、死ぬのかもしれなかったあいつに・・・・櫂は。



小刻みに櫂の体が震える。
きっとアイチならリバースを抑えられる、アイチならどんな我儘も、冷たい態度をしても櫂の傍から離れたりしない。

でも、それが永遠に続くはずがない・・・だからアイチはガイヤールを、カトルナイツを選んだのか?

「止められなかったお前達も、同罪だ!!何故、櫂トシキの傍に以前と変わらずにいる!!あんなことを起こしておいて誰も罪を責めない!!
・・そんなお前達にアイチさんは呆れたのだろう・・お前達・・・いいや


櫂トシキ、お前はアイチさんにとって友人でもなければ、知人でもない。・・・・不幸を招く害悪だ!」

その言葉に櫂の瞳は見開いた。

二枚のドライブチェックは、クルティカルトリガー。
櫂のガードを貫通し、ダメージは6枚・・・・櫂はガイヤールに敗北した。

「まさかっ・・・櫂が負けただと・・・・!!」
敗北が決定した瞬間、櫂のダメージゾーンに置かれていたカードが青い炎で燃え上がった。
これはいけない、全員ジャッジメント喰らい敗北しているからわかる、止めるよりも早くガイヤールの制裁の声が早い。

「今こそ味わうがいい、敗北の味を!この牢獄の聖なる炎を!爆ぜろ、ジャッジメント!!」
青い炎が櫂の体を燃やす、これが敗者に与えられた騎士の制裁。

「うわぁぁぁっ!!」
「櫂!!」
ようやく炎が収まると、櫂に近づくことができた。
倒れる直前にナオキが櫂の体を支える、体は熱く・・ジャッジメントの凄まじさがわかる。

「てめっ・・・よくも!!」
カムイとミサキが守るように、櫂の前に立つ。
敗者が決まったことで、プリズンは解除されて、通常空間に戻った。

「この中で一番強い櫂トシキが敗北したのだ、もはや敗北がすでに決定したファイトをするというのか?
しかし・・お前達はアイチさんにとってもはや友人でもなんでもない、この場で青き炎の制裁を持って・・絶望を与えよう」

再びガイヤールがプリズンを生み出そうと、指輪から青い炎が燃え上がる。
構えるミサキとカムイ、櫂ほどの実力者が負けたのだ、正直勝てるかどうかわかず・・またジャッジメントの感覚が残っており

無意識に腕を摩るミサキ、記憶力が良いのが仇となっている。
カムイも震えそうな足を気持ちだけで押さえていた・・だが。

キキィッーーー!!

突然一台の普通車が割り込んでくると、櫂の後ろで止まると勢いよく扉が開いた。
運転していたのはテツだった、焦った顔で「早く乗れ!!」と車内に誘導。

「テツ・・・・」
弱弱しい声で櫂はテツの名を呼ぶ。

「・・わかった!!逃げるぞ!!」
今は逃げた方が賢明だと判断し、ナオキは櫂を支えて急いで車内へ。
続いてカムイ達も乗り込むと車は急発進して、この場から離脱する。

「逃がすかっ!!」
この場に櫂に関係するファイター全員が集まっている、またとないチャンスだ。
指輪から青い炎を放ち、テツの車を止めようとした時・・・・。


『ガイヤール君・・・・』
「・・・アイチさん?」
アイチの声がし、ガイヤールの手は止まる。
辺りにはアイチの姿はないが呼ばれた気がし、急いで月の宮に戻ることにした。

青い炎を軽く振ると、一瞬にして彼の姿は消えた。




「あいつ・・・追いかけてこねーぞ・・」
後部座席から、カムイがガイヤールが追ってこないかをようやく表通りに出たのだが気になっているのか、後ろをずっと見ている。
車相手だから追いかけようもないが、車に乗り込んだ時車ごと燃やす勢いで炎を生み出して、てっきり力づくて仕掛けてくるかと
正直ヒヤヒヤしたのだか、本当に追ってくる気配がホッとしたのか後部座席のシーツに座り込む。

「助かったぜ、テツ。・・でもどうして此処に」
視線を前に戻し、冷静になったナオキは偶然通りかかったにしては妙だと感じた。

櫂は気を失うまいと、痛みに耐えている。
その隣で櫂の代わりにナオキがテツに質問していると、赤信号で止まったところで前を向いたまま答えた。

「礼なら先導アイチに言うんだな、オリビエ・ガイヤールは先導に呼ばれて戻ったのだろう」
レンから相当アイチにガイヤールは心酔し、アイチ自身が甲斐甲斐しく世話をされていると聞いて
彼の一声で戻った様子なら、おそらくはレンの読み通りだろう。

「アイチが、もしかして敵に捕まっているの!!」
焦ったように、すぐに助けに行かなければというミサキ。
だが敵のアジトに囚われているのならカトルナイツも揃っている、アイチ抜きな上に櫂の敗北を目の当たりにして
正直、・・感情だけで勝てるとは、こんな時なのに冷静に考えた結果、返り討ちにされると嫌でも未来を見通してしまう。

「おい、新城テツ!!アイチお兄さんが捕まっているところに今すぐに案内しろ!」
「そのことに関しては俺も聞いてはいない、それに・・・今の奴らは大義名分を手にし、実力ならレンや先導とも対等にファイトができる相手だぞ」

「ぐっ・・!!」
さすがのカムイも、少しは大人になったのかやられるとわかっているファイトを仕掛けるほど直球馬鹿ではなくなった。
こちらにレンと対等にファイトできる櫂がこの調子では、カムイ達がしっかりしなければならないのに、力の無さに情けなくなり拳を強く握る。

「戸倉・・・葛木・・・後江高校に行け。三和が心配だ・・俺のことはいいから・・」
「そうだ!!三和の奴が危ないんだ!!此処で下してくれ!!」

櫂とナオキはこのままテツの車に乗り、無傷のミサキとカムイが路肩に車が止まると走り出す。
向かうは後江高校、ナオキも三和に連絡を入れているが電話にまったくでない、おそらくやられたのだと考えるべきだ。

(三和まで・・・どうして)
確かに三和は、櫂の良きファイトの相手としてなかなかの強さだがサーキットの経験もなく
実力差がわかっているのに負ければ苦痛の伴うファイトを仕掛けるなんて、質の悪すぎる弱い者いじめ、暴力だ。

「俺も奴らと戦い、敗れた」
「「!!」」
フーファイター本部に入り込んできたセラという男だが、突然仕掛けてきて屋も得ずファイトをすることになったが
悔しいが負けてしまい、暫く間レンに絶対安静命令を出されていた、その間はレンが珍しくテツの分まで仕事をしてくれていて
やればできるのにとこのまま倒れたままでいようかと、正直思った。

「お前が気にすることじゃない。狙われたとわかっていても櫂、お前とは友だ」
「・・・テツ・・」

それにレンともなと、テツは怯えもせずしっかりとした口調で言った。
櫂に教えられた住所のマンションに到着すると、ナオキの携帯が鳴るとミサキ達が体育館で倒れている三和を発見したらしい。

ジャッジメントを喰らい、怪我を負っていて今は保健室でミサキの治療を受けているとカムイから連絡があった。


「くそっ・・・三和の奴まで、何が櫂にかかわった人間全てが対象だと!!神様にでもなった気でいやがるのかよっ!!」
「・・・落ち着け、石田ナオキ。お前はこれから念のためカードキャピルへ行け」

僅かに櫂と関わっている人間も対象の可能性がある。
実力差が明らかにわかっている相手でも容赦のない彼らだ、店にいる全ての人間をターゲットにすることも考えられた。

「わかった!!頼むぜ、テツ!!」
ナオキの中で櫂と関係があるとすれば、エミやマイ、コーリンやシンも考えられる。
平気で人を傷つけるような奴らとどうしてアイチがいる!

「くそっ・・ちくしょうっ!!」
どうして何も相談してくれないんだと頼られなくて力が足りなくて涙が流れながらも
今できることをしようと、力いっぱい走っていく。


家に上がると、冷たい空気に人気の無さを感じる。
簡易の救急箱を取り出すと、櫂は手慣れた手つきで櫂の手当てを始めた。

レンと出会う前は、喧嘩ばかりをしていてこういう怪我は日常茶飯事だったが
人生、あんな若気の至りの体験も役に立つものだと、ついつい笑いそうになるが櫂の表情は暗い。

(先導は櫂がこうならないように敵のところへいたが・・・やはり無駄だったということか)
ファイトはあくまで楽しくするもの、憎しみや怒りでするものではない。
自身もただ相手を倒すだけのつまらないファイトをしていた時期があり、アイチの気持ちはわからないでもないが

空振りで、無駄に終わってしまったアイチの想い。

家族にも友人にも本当のことを言えず、だった一人敵の陣地に残り、最悪の事態となったことをどう思っているのか知りたくもない。

包帯を巻き終えると、テツはずっと黙り込んでいた櫂に話しかける。

「櫂」
「・・・・リンクジョーカーの侵攻でガイヤールは傷ついた。
なのに俺は償いもせずに、いつかは許されると期待して日常を送っていて・・・奴らはどんな気持ちだったんだろう?」

わかっていた償わなければならない罪だと。
でもアイチに傍にいてほしいと言われて、許されたような気がした。

櫂は許されない罪だと理解はしていたが、開き直ったように償うのを忘れていた。

甘えてはいけない、いつだって櫂は自分に厳しい男だったはず、自負もしていたのに結局他の人間のように
他人に厳しく、自分に甘い男だった、だからアイチも自分には相談もしなかった。

「お前は、アイチが命を失うかもしれない状態だったことを知っていたのか?」
「・・・・俺達は後から来て、戸倉に聞いて知っただけだ。だか敵も多く、追いかけられなかった・・・それにあの場に行けるのは高みの頂上に立つ者のみだ」

自分が行くべきではない、レンを追いかけたかった気持ちを押さえて、見守るしかなかった。
こんなのは言い分け、レンの時も力の無さに傍にいることしかできなかった、でも本当に友達なら櫂のように諦めずに挑むことすらせずに。

「正気だったということも知っても、なんだろうな・・お前らしくて呆れるというか・・・レンも同じだ」
穏やかにテツは笑う、櫂と友達だったことで苦労をかけたのに大したことはないと。
救急箱をしまうと、テツは立ち上がった・・彼にはやるべきことがあると。

「・・・テツ、お前から見た俺とアイチは・・・・どういう関係に見える?」
「ガイヤールに妙なことでも吹き込まれたのか?らしくない、孤高のファイター・櫂トシキが・・・

友達、俺とレン・・そして葛木達も同じだろ?」

そう言ってくれて、櫂は救われた気がした。
ゆっくり休むようにいうとテツは部屋を後にする、誰もいなくなった部屋・・・最近三和が家を嗅ぎ付けて出入りするようになり
次にアイチを家へと招いた、アイチは嬉しそうに笑っていたのに本当は迷惑だったのではないのか?

『俺とお前が友達?笑わせるな、俺とお前は戦う価値もない』
『もうアイチとの決着はついている、今更戦う気はない』

『僕はずっと君の傍にいる!!』

「いないじゃないかっ・・・!!何が傍にいるだっ・・・!!」
今、こんなのにも誰かに・・アイチにいてほしいのに、アイチはいない。
遠く離れた場所に、アイチを守る騎士となったガイヤールと共に時を過ごしていく、櫂ではない、ガイヤールとだ。


片膝を立てると、櫂は顔を下に俯かせる。
ジャッジメントの痛みはない、アイチが櫂の元を離れた・・自業自得のはずなのに心を苦しい・・。















力を使ってガイヤールは急いで月の宮へと戻った。
もしかして、アイチ救出に沈黙し続けているレオンとレンがついに動き出したのかと慌ててアイチを探していると。

「アイチさん・・・・・」
いつもの椅子の上にうたた寝をしているアイチを見つけて、ホッとしていた。

規則正しく胸を上下させ、本当にただ寝ているだけが夕方になり肌寒くなってきたが上着もかけずに風邪を引いてしまう。
小さく笑みを浮かべると、ひざ掛けをアイチを起こさないように優しく掛ける。

熟睡していることを確認すると、少女のようなその手を軽く持ち上げると手の甲にキスをする。



「貴方は僕が守ります・・・・絶対に」


騎士が忠誠を誓うような、空から照らされるオレンジ色の光に月の宮は照らされている。

櫂への制裁は一度だけでは収まらないし、櫂が一度のジャッジメントで諦めるとは櫂を観察していても思えず
次こそ、櫂に絶望を与えようとだがその前のアイチのために、夕食の準備しなければと月の宮から離れる。



彼がいなくなったのを確認すると、アイチは薄らと目を開けた。
そしてその瞳からは、一筋の涙が零れてひざ掛けに落ちていく・・・・。



「櫂君・・・・」











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