「アタック!!」
「ガードです」
魔界城 ファタリテートを二体コールし、櫂の攻撃は届かないでいた。
櫂はグレード3までコールし、次のレンのターンが終了すれば決着をつける気でいた、しかしレンの方も同じだが。

「光無き世界で互いを知る者達よ、漆黒の世界で生まれた魂と魂を繋ぐその力を我が手に!!シーク・ザ・メイト!!」
新たな姿となった闇のドラゴン・・・ファントム・ブラスター・ドラゴン“Abyss”とさらなる進化をとげた黒き騎士ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”。

「まさか、再びこいつらと戦うとはなっ・・」
嫌な雲もライドと共に、空から運んできて、青空を隠してしまう。

「懐かしいでしょ?・・・・再び、 憎悪の地獄で生まれし絆の力!互いを傷つけ、刺し貫く!
漆黒の騎士達の交わり並び立て、並び立てぬ筈の者達よ!レギオンアタック!!」
「・・・・・させるかっ!」

ガードに使えるカードはまだある、守り切れると出そうとしたが
レンはにやりと笑うと、ファイトだというのに櫂に問いかけるように話を始めた。

「さすがの櫂も、同じ炎を使う・・・・しかも騎士の前には勝てませんでしたか。君とのファイトでいつも感じていた
あの熱き気持ちがまったく感じません。気づいてないのですか?」

リアガードのスキルでレギオンのパワーがプラスされていく。
さらにカードを追加しなければ、守りきれないと下唇を噛む。

「俺はあんな男の言葉などに、惑わされたりしていない!!」
「そうでしょうか・・・だって君の頭中には今、僕とのファイトなどまったく計算もしていないようですけど・・・・」

否定ができなかった。
櫂の頭の中にはもしも、ガイヤールが櫂のやったことをしていた・・そのことばかりを考えている。




ブラスター・ブレードを返してもらい、ヴァンガードをガイヤールに優しく教えてもらい
学校にガイヤールが迎えに行くようになり、二人の仲はまるで久しぶりに会った親友のようだった。

だが、珍しくアイチが一人店内で買ったパックを開封して、デッキを組み替えていると櫂が目の前に座る。

「あっ、こんにちは櫂君。えっと・・・何か?」
櫂は無言のまま、アイチを見た。
カードキャピタルではガイヤールには敗北したものの櫂は強いファイターで、今のアイチには挑んでも敗北は確実。

「・・・・おい、俺とファイトしないか?」
「僕と?でも・・僕、強くないし。きっと櫂君を満足できないよ・・・」
三和から櫂は強い相手としかファイトしないと聞く、今のアイチは初心者に毛が生えた程度。
身の程知らずだよと断られてしまう、・・・傷ついたのは意外にも櫂の方だった、ずっと櫂とファイトしたと言っていたのに

ブラスター・ブレード一枚で、こんなに扱いに差が出てしまうものなのか?


「あっ、ガイヤール君」
自動ドアが開くと、遅れてすいませんと謝るガイヤールと嬉しそうに駆け寄るアイチ。
彼が来てしまったら、間には入り込むことができない。






初の全国大会挑戦をしたものの、見事の敗北。
しかもアイチは一勝もできずに足手まといになってしまったとひどく落ち込んでいた。

レンと光定の決勝戦を三和とレストランで見ていると、三和はアイチが元気がないと漏らしていたが。

「俺は、励まさんぞ」
「何言ってんだ?・・・お前とアイチって、特に接点ないだろう?」

ブラスター・ブレードはガイヤールがあげたカード、櫂ではない。
そう言われて、アイチを元気づける手間が省けたのに三和には悪意はないがアイチと関係ないと言われて傷ついている自分がいる。

(俺はせいせいしているはずだ、ずっと俺を美化して追いかけまわしていたアイチがいなくなったのに・・・)
振り向けばアイチがこちらを向いただけで嬉しそうにしていて、櫂はアイチに尊敬されるようなことをしてはいない。
勝手なイメージを押し付けている、迷惑な少年のはず。

「・・・アイチ」
三和と別れ、一人歩いていると公園の水辺で座り込んで落ち込んでいるアイチを見つけた。
あまりにも沈んだ様子に一言ぐらいは声をかけてやろうとすると、ガイヤールが飲み物片手に話しかけてくると近くのベンチで励まされていた。

「僕、ガイヤール君に迷惑ばっかりかけて・・・ごめんね」
「気にしないでください、初めての全国大会なんですよ?アイチさんはチームの中で一番ファイトの経験も
ヴァンガードの知識も少ないのですから、負けることは恥ではありません」

一緒に強くなりましょうと櫂が浮かべることのできない、優しい笑顔でアイチの手を握る。
その横には冷たいアイスティーが二つ、ガイヤールに励ましされたアイチはようやく笑って、今後のことを話をしているようだった。

櫂は静かに・・・その場から離れていく。



「いらっしゃー・・・って、櫂かよ」
「・・・戸倉はどうした?」

水色のエプロンを着て、レジに立つ三和。
店にはシンの姿もなく稼ぎ時の夏休みだというのに、どうしたのかと聞くと合宿に行ったと教えられた。

「お前は行かなくてよかったのか?」
「うーん、ねーちゃんの水着姿は見たかったけど、店番のアルバイト押し付けられてさー」

そうかというと櫂はヴァンガードもせず、店内を後にする。
今はファイトする気にはなれなかったから、心を熱くさせるファイト、アイチは櫂の手もかからずに強くなっているというのに


どうして、寂しいとどうしてアイチが傍にいないのかと考えてしまうのか?
後ろを振り返るが誰もいない、今頃アイチ達は夏合宿で尊敬するガイヤールと一緒にいる、櫂も好きなことをして楽しめばいいのに

今は、何も手がつかない。




「虚空の撃退者 マスカレードにライド!」
ライドされたのは鎧を纏った騎士が現れる、ヴァンガードにはブラスター・ダーク・撃退者“Abyss” がいるので
パワー、プラス3000となって櫂のユニットにアタックをする。

「さらにブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”のスキルを発動する!」
カウンタープラストにより、櫂のリアガードを一体退却させ、ガードできるユニットを削られてしまう。
櫂の方も負けてはいなかった、すぐさま反撃に出た。

「・・燃え上がれ・・!俺の魂の炎!ドラゴニック・オーバーロードにライド!」
己の分身、全てのものを焼き尽くす黙示録の炎を持つ櫂最強の切り札、ドラゴニック・オーバーロード。
しかし、レンは顔色一つ変えずにいる、無感情のまま赤いドラゴンを見つめていた。

「これならまだ、あの時の方がまだマシですよ。櫂、僕にはまったくこのドラゴンからは熱い焔の熱は伝わってこない」
それはレンに再度FF本部ビル内で挑んできた時のことだろう、あの時の方がまだマシだと
このファイトはレンの勝利が決まっているかのような口ぶりだ。

「なんだと・・」
「ドラゴニック・オーバーロードは君の分身、今の君の心はまるで熱く燃え上がっていない。
オリビエ・ガイヤールの青き炎に怖気づいたのですか?・・・そしてまた、逃げるんですか


僕の時のように」


どう向き合っていいか、向かい合うことができずに櫂はレンの元へと去って行った時だ。
レンは見据えたようにまっすぐと櫂を見た、櫂は目を見開いてあの時のことのことを嫌でも思い出してしまう。

(俺は逃げて・・自分自身に苛立っていた・・・!)
後江に一人、戻ってきても昔馴染みで変わらなく接してくれたの三和、そしてアイチだけだった。
レンの時のようにどうすればいいかわかず、アイチから距離を置いて次第に今の仲間達からも自然と離れていくのだろうか?



『優勝はチームQ4!!』
全国大会に続いて、アイチはアジアサーキットも制し、良くライバルとなったレンとレオン達と仲良さそうに握手をしていた。
ミサキ達と嬉しそうにしながら大きなトロフィーを持ち上げている姿を櫂は一人、街の巨大モニターから見ている。

アイチは強くなった、櫂に関わることなく。
これでアイチと対等のファイトができる、嬉しいはずなのに今のアイチはとても遠い。

『これもチームメイトのおかげです、応援してくれてありがとうございます!』
見上げるモニターには嬉しそうに笑うアイチと、ガイヤール。
あの舞台に櫂はいない、そうだ・・・もともと櫂はNAL4に移動したんだからいなくて当然なのに、レンからも誘いが来た時は驚いたが
櫂は素直になれず、断ったのだ。

(別にカードキャピタルに行けば会えるじゃないか?)
強くなったあいつなら、櫂のファイトを誘えば二つ返事で受けてくれるはず。
気づけば春になっていて、ピンクの花びらが空を舞っている。店内に入ればアイチがいた・・隣にはガイヤールがいた。

あぁ・・・、同じ高校にアイチは進学したのだ。
ただカード一枚をあげたのが別の人間だっただけで、アイチがこんなにも遠く、切ない。

(ブラスター・ブレードをあげたという、記憶の無かったアジアサーキットで証明されたはずだ。
俺はアイチのことなど、・・・まったく気にもしなかったことを)

暗闇の中に、一人・・取り残されたかのように櫂の手には何もない。
いつからだろう、ヴァンガードをしなくなったのは、ファイトが楽しくなくなったのは。

ヴァンガードをすればアイチが笑っていて、それが櫂の近くでないと知った時だろうか。




「俺は・・・逃げたわけじゃっ・・・!!」
「・・・その辺については僕の君にとやかく言う資格がないのはわかっていますよ」
レンは目を閉じて当時のことを思い出していた、櫂よりも長い付き合いのテツですらレンの傍にいることしかできなかったし
自身も己の間違いに気づくことなく、ただ相手を屈服させてるファイトだけをしていた。

圧倒的な力で勝つことが楽しかったが、ある時同等の力を持つアイチが現れて、楽しさを思い出させてくれた。
今、そのアイチは櫂というヴァンガードを教えてくれたファイターのせいで一人思い悩んでいる。

「光無き世界で互いを知る者達よ、漆黒の世界で生まれた魂と魂を繋ぐその力を我が手に!

・・・・シーク・ザ・メイト!」

撃退者 ファントム・ブラスター “Abyss”のシークメイトが再発動。
せっかく櫂が退却させたブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”が山札へと戻っていくとヴァンガードサークルに二体並び立った。

「くっ・・・!!」
あの時の嫌な記憶が蘇る。
何もできなかった、無力に打ちひしがれた胸が重たくなる記憶がファントム・ブラスター“Abyss”を見て、彷彿とさせていた。


「アイチ君は僕のライバルで、大切な友人です。
その彼が君のせいで腐ってしまうのなら



アイチは僕が貰います」


衝撃の言葉だった、レンがアイチをカトルナイツから攫い貰うという。
確かにFFの力を持ってすれば、カトルナイツがいかに強かろうとももしかしたら勝つかもしれない。

そして助けたアイチをレンが優しく慰めて、チームメイトとして歓迎する。
二人は同じパラディン使いにして、櫂にはない繋がりがある、助け出されたことでアイチとレンの仲は誰にも引き裂かれない絆へとなってしまったら・・。

『レンさん・・』
『アイチ・・・・』
福原高校に転校して、NAL4として良きチームメイト、そして良き友人になる。
同じ騎士のクランに、光と闇の騎士の名のユニットの分身を持つ二人ならすぐに仲良くなれる・・でも、櫂はそんなこと許せない。


絶対に嫌だ。


「お前に・・・・っ!!アイチは渡さない!!」


その時だ、ヴァンガードとして置かれていたオーバーロードが金色の光に輝き出したのは。
レオンもレンも驚いた様子で、櫂のカードを見ていた。

数分後、灰色の爆発音と共にファイトの勝敗は決まった。
勝ったのは・・・・櫂だ。





「やればできるじゃないですか・・櫂」
「・・・・あぁ・・」
悔しがる様子もなく、レンは穏やかな顔をしていたのは・・・数秒間だけ。
まさかの展開にレンは小さな子供みたいに膨れている。

「ずるいですよ、櫂。ルール違反ですー、今のは取り消しです、もう一度ファイトですーーー」
「今更だぞ、レン。約束だ、アイチが何処にいるか教えろ。それと・・・


次のファイトはアイチと一緒にだ」


吹っ切れたような顔をしている櫂に、やっと立ち直ることができたとレンは溜息をしている。
いつの間にか夜が明けて、地平線から明るい光が差し込んでビル全体を照らし、その中でレンはアイチがいる場所を教えた。

「アイチ君は今、元立凪ビルにいます。今は名も知らぬ謎の組織が使っているようですが・・・
立ち向かえるのですか?君が傷つけた彼らを再び傷つけることになったとしても」
断言はできないが、櫂が先兵となりリバースを広め、そのせいで傷を負った彼らを再び傷つけることに
罪の重さを知った今、理解しながらもできるかと問いかけた。

「奴らは、俺のせいで傷ついたのかもしれない。だが奴らもすでに誰かを傷つけている。
・・・・俺のせいだなんて言わせない!」

その言葉には強い意志が込められており、レンも今の櫂ならガイヤールであっても大丈夫だと
レンは「アイチ君によろしく伝えておいてくださいね」と言うだけで去っていく、レオンも少し櫂を気にかけてはいたがレンと同じ扉から去っていく。

(・・・アイチ、俺はお前と沢山話がしたい)
なんでもいい、日常のこと、部活のこと、学校であったこと、ただアイチの声が、顔が見たい。
だって櫂はアイチに教えてもらった、カードファイト以外の楽しさを。

1からデッキを作ろうと、共に過ごした僅かな時間。
熱く、体中の血が沸騰させるようものではない、優しくて温かくて、いつまでも共に過ごしたいと願う時を。

デッキを握りしめ、櫂は己の決心が形となって現れたオーバーロードを手にする。
ちゃんとアイチと友達に、親友になりたい。

「俺はお前を、リンクジョーカーに堕としてしまった。
・・・・こんな先導者だが、俺と戦ってくれ・・・大切な俺の・・・・・アイチを取り戻すために」

まるで答えるかのように、光輝くカード。
手の甲に巻かれていた包帯が、火の気もないのに焼けて消えていく。

その顔は、常に何事にもつまらなそうな顔をして周囲を威嚇するような櫂はもういなかった。


その光の中、たとえブラスター・ブレードが出会わせてくれなかった、もう一つの過去の中
最初、アイチが櫂とのファイトを丁重に断った時に戻ると、立ち去ろうしたアイチの手を櫂が掴む。


『櫂君?』
『俺は強い奴とファイトしたいわけじゃない・・・お前と、楽しいファイトをしたいんだ』

その言葉に、一瞬驚いていたがアイチは穏やかに微笑む。




FFビルを先に出たレンとレオンが並んで、朝の冷たい空気の中を歩いていた。
まだレンは櫂とのファイトで納得がいかない様子で愚痴を零しているかと思いきや、聞いているとそうではないらしい。

「あーあ、アイチ君をやっぱり櫂にあげるのは惜しいです」
囚われの姫を救出に行った王子様と結ばれるのは、童話の王道。
きっとアイチは今まで以上に櫂を尊敬するのだろうが、それをレンがやりたかったの頬を膨らませている。

「馬鹿を言え、貴様のような昼行燈に先導はやれるか。貴様にやるくらいなら俺がもらう」
「えーっ、レオン君もアイチ君狙いだったんですかー!」

アイチならアクアフォースもすぐに使いこなせるだろうし、ジリアン達とも仲良くやっていける。
本来は蒼龍の民にしか使うことの許されないクランだがアイチなら使っても、レオンも納得できるし、良きライバルにして友人としてやっていけるだろう。

「酷いです、僕はいつだって真面目な誠実な男なんですよ」
「ファイトの時以外、まったく発揮されていない気がするが?」
「テツとおんなじこと言ってーーー、レオン君の頭でっかちー!」
「貴様の脳が柔らかすぎるんだ、もっとしっかりと生きろ」

などと、漫才のような会話をしつつ・・・二人は歩いて行ったという。







「時は来た・・・」
夜明けまで、デッキの構築をしていたアイチはゆっくりと目を開けた。
力を使ってデッキ中のユニット達とも話をし、反対する者もいたがアイチは譲らなかった。

ブラスター・ブレードに意外にマイ・ヴァンガードは頑固ですねと苦笑されたが
彼が折れる形で協力してくれることになった、レン達もクリス達も方も間に合いそうにない。

「いつまでも、此処にはいられない」
白いテーブルの上には円を掻くようにカードが並べられ、その中央にはレギオン発動時と同じようにロイヤルパラディンのカードが二枚並べられていた。







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