話にして、中身も外見も大和撫子を形にしたような方だった、男性相手には失礼かもしれないが
優しい物腰に、丁寧な言葉づかい、同じ男性だというのにまったく別の世界の人間に見えていた。

(こんな可愛らしい方・・・見たことがない)

ファイトになると、凛々しく戦う姿にまるで恋したように頬を染めた目でガイヤールは見ていた。
これほどの光輝な方ならリバースから救っても何ら不思議ではないと・・、ガイヤールは復讐という目的を忘れかけるほどの楽しい、温かな日々だったのに。


「アイチ」
「櫂君!」


その、アイチの傍には・・いつも櫂がいた。
嬉しそうに駆け寄っていく姿、アイチは櫂には誰よりも嬉しそうに駆け寄っていく。

置いていかれたガイヤールは、いつもつまらなそうな顔をしてアイチの背中を見送る。
セラの言う通り・・・いやそれ以上に最悪だ、櫂は罪を犯した関わらず以前と変わらずの日々を過ごしていた。

リンクジョーカーが消えれば終わったものだと、片づけてでもいるのだろうか。

(許さないっ・・・お前だけは




絶対に!!)




人を傷つけておいて、アイチに笑われていることが!!











「祝福されし光の竜よ、青き炎で鎖を解き放て!ライド、青き炎の解放者 プロミネンスコア!!」
後列のマロンにブーストされ、アイチのヴァンガードに襲い掛かってくる。
これでアイチのダメージは4枚となりガイヤールは3枚目、予想以上にガイヤールの心の浸食が進んでいることがわかった。

(君の気持ちはわかる、僕も同じ・・・傷ついたことがあるから)
胸に自然と手を当てるアイチ。
ガイヤールの痛みがわかるから、レン達のようにはできなかった。

もしも立場が違っていたら、もしかした櫂のことをよく知らないままに恨んでいたのかもしれない。

「けど、それでもっ・・・!!僕のターンだ!
開け、光輪の門!舞い降りよ、白銀の翼!ライド、探索者シングセイバー・ドラゴン!」

白銀のドラゴンが空から舞い降りる。
金色の翼を大きく広げる、空席だったリアガードにもユニットをコールさせて、レギオンできる体制を徐々に整えていく。

「探索者 トランキル・ユニコーンのアタック!」
「ノーカードだ」
リアガードを一枚失い、ドロップゾーンへ。
続いてシングセイバー・ドラゴンのアタック、パワーがプラス2000される。
誠実の探索者 シンリックのアタック、ヴァンガードへのアタックがヒットしたためパワープラス3000となり、ガイヤールの陣営は削られていく。

「・・・ターンエンド」
ガイヤールのダメージは5枚目、しかしネーヴはガイアールとほぼ互角の力を持っていたのにあっさりと倒されてしまった。
黒い炎を混じらせた青い炎に秘密があるのではないかとアイチは自然と身構える。

最初のドローを引くと、口元に笑みを浮かべた。
しかし、彼の笑みはまるでリバースしたものが浮かべる悪しきものが持つ歪んだ心の示しているような。

「誓約を破らんとせし者に鉄槌を与えよ!誓いの解放者 アグロヴァル・・・・レギオン!!」
レギオンの相手はプロミネンスコアだ。
アイチの持つシングセイバー・ドラゴンから力を借りて竜化したと言われている。

本来はゴールドパラディンとロイヤルパラディンは手を取り合い、平和のために戦うはずなのに
何故、ガイヤールのゴールドパラディンは復讐のために剣を取ってしまったのか。


「これは凄い、さてとアイチ様はファイナルターンですかね」
モレスは一人、監視モニター室でアイチとガイヤールのファイトを高見の見物していると
誰かがモレスに「おい」と話しかけてきた、おそらくはセラだろうと滑稽で愉快な二人のファイトに笑いながら振り向くと。

「このっ・・・よくもだましてくれたな!!」
「うげっ!!・・・あっ・・・貴方は!」
力の限り殴られたモレス、床に倒れる前に胸倉をつかまれる。
殴った相手はネーヴだった、あれからどうにか意識が戻り、痛みをこらえてアイチを追いかけていると傭兵達がモレスのところへと
報告のために移動しているのを見かけて、こっそり後をつけてきたという、その傭兵達も全員殴って失神させた。

「あの・・・ジャッジメントから、おっ・・早い復活で」
「お前らの怒りでさっさと目が覚めたわ!!アイチ殿がいる場所を教えろ!!」
それならと赤くなった頬を摩りながら指さす先にはアイチと、ガイヤールが。
背景が青い炎となっているため、プリズンが発動しているのだが相手はアイチだった。

モレスは情けない悲鳴を上げて、逃げていき、モニター室にはネーヴ一人となる。 

「どうして・・・あの二人が・・・そうか!!」
(ガイヤールはアイチ殿すらも、櫂トシキに見えているというのか!)
此処からそんなに遠くないと、ネーヴは足を引きづりながら歩き出す。
もうネーヴには力も何もなくプリズンに対抗できない、だがガイヤールをファイト中だが羽交い絞めにでもして止めることはできる。

(俺はファイトを邪魔した卑怯者だと、一生名指しされてもいい!!ガイヤールが一生己を責め続けることに比べたら!!)

ネーヴは家族をすでに内乱で失っている、でもガイヤールは沢山の家族がいる。
立ち直れるように、傷つけられた仇のために騎士となったのに、これではあんまりじゃないか。

「くそっ・・どうしてもっと早く気付かなかったっ・・・早く動けっ・・止めないといけないというのに!!」
アイチとセラに言わせるまで、敵の力だと疑いもしなかった。
クレイが与えてくれた力とでも思い込んでいたのかと、唇を噛みしめながらのダメージを負った体では歩みは遅かった。



「コール!」
レギオンの左右に、リアガードを展開。
最初のリアガードによるアタック、解放者 ホーリー・ウィザードは解放者のカード4枚以上によりプラスパワー3000となり

アイチのリアガードを一枚削ってしまう。

「交わりし炎と炎は、青き共鳴を生む。一握の灰すら残さず滅せよ!青き炎、ペルソナ・フラムブルー・リンケージ!」
アグロヴァルがスペリオルコールされ、パワープラス3000、クルティカル1が追加し、リアガードを入れ替えられた。
そして青き炎を纏った竜と騎士がアイチ達に向かってくる。

「・・・完全ガード!!」
アイチの前に護法の探索者 シロン、さらに手札の雄心の探索者 マークが前に出す。
トリガーが引かれても防げるようにとリアガードを出したが、ガード10000はやりすぎなのではとも普通なら考えるが。

「ドライブチェック、・・・・ゲットクルティカルトリガー!」
続いて二枚目もクルティカルトリガー、もしも完全ガードだけなら突破されていたかもしれない。
舌打ちをするガイヤールにアイチは冷や汗を流す、これがネーヴが倒れた原因、PSYクオリアよりもタチが悪い。

「だかっ!!まだだ」
最後のリアガードのアタックが残っており、二枚のトリガーの力のすべてを与えて、一番有能なリアガードを倒す。
ガイヤールは己の手札を見て、防ぎきれると顔には出さないように確信していのだが。

「並び立て、我が魂の分身!!・・・・レギオン!!」
白銀のドラゴンの咆哮に答えるように、ドロップゾーンのカードが山札へと戻ると山札の中から一枚のカードが出てくる。
それはゴールドパラディンと同じ、ドラゴンと・・・騎士だ。

「シングセイバー・ドラゴンっ・・ブラスター・ブレード・探索者!!」
白亜の色に包まれた二体のユニット。
まずはガイヤールのリアガードからのアタックし、消えていく・・・そしてレギオンした二体のよるアタックだが。

「させるものか!!こちらも・・・完全ガード!!」
マルクが前に出てきてガードする、こちらもクルティカルが出てきてもいいように多めのシールド数を持つカードをつけた。
しかしアイチはトリガーチェックでクルティカルは引けなかった、ガイヤールは天は己に味方したと喜んでいたが。

「此処でシングセイバー・ドラゴンのソウルプラスト!!
山札からシングセイバー・ドラゴンをスペリオルコール!!・・・再び立ち上がれ


レギオン!!」


「ばっ・・・馬鹿なっ・・・そんなっ!!」
ネーヴにも見せなかったガイヤールの初めての焦りの色が見えた。
アタックが終了したはずが、疑似レギオンし、立ち上がってしまい、手札にはレギオンを防げるほどのカード数は残っていない。

(あの時、クルティカルを計算して使わなければこんなことにはっ・・・・)

軽率だったと過去の自分の失態を悔しがっても遅い。
これであとはガイヤールのヴァンガードにアタックをすれば、アイチの完全勝利。

「目を覚ましてガイヤール君!!レギオンアタック!!」
手を翳し、アイチはガイヤールのレギオンにアタックを命じようとする。
しかし悔しそうにこちらを見ているガイヤールにアイチの手が止まった。





『どうして、僕は傷ついたのに、どうしてお前は平気な顔して生きていられる』




それは忘れようとしていた過去のアイチの姿と重なった。
泥で汚されたランドセル。
伸びたTシャツ。
学校の外でも中でもいじめられて、傷だらけだった時のこと。




「・・・・・リアガードにアタック」
小さくアイチが呟くと、ヴァンガードではなく横のリアガードにアタックをした。
てっきりガイヤールはレギオンしたヴァンガードにでもアタックするかと思っていたので当初は驚いたが今のアイチ

櫂からは覇気が感じられない。

「フンッ、僕に自分の罪の重さから情けをかけたつもりか?」
「・・・・」
背後にいたブラスター・ブレード・探索者が声をかける。
どうして命令を途中変更したのかと、震える声でアイチは答えた。

「ごめん、僕・・・やっぱり駄目だ。ガイヤール君の気持ちわかるから・・・辛いよね、人に傷つけられたら

なのに傷つけた人がその痛みを知らずに笑っていたら、許せないのも」

君達の先導者失格だ。
泣き出しそうな声でアイチが言う。




「これで終わりだ!!青き炎によって裁かれよ、レギオンアタック!!」



静かに目を閉じるアイチ。
切なそうな目をしたまま、ブラスター・ブレードはシングセイバー・ドラゴンと共に消えていく。

ダメージは、これで6枚目。

敗者への裁きの炎、ダメージゾーンの6枚が燃え始める。



「今こそ味わうがいい、お前の犯した罪により傷ついた者の痛みを!!この牢獄の聖なる炎を!爆ぜろ、ジャッジメント!!」
「うわぁぁぁっ!!」

アイチの身体が青い炎に包まれて燃える。
苦しみに耐えながらもガイヤールに手を伸ばそうとする、どうかこのままアイチを櫂だと勘違いしたままでいてほしい。

これで櫂は苦しんで、傷ついたと知って傷ついて
本当の櫂にはもう手を出さないで心の傷が他者の痛みで救われてほしい。



(皆・・・・・ごめん、僕はもう・・皆に会えない・・・・)



走馬灯のように家族と、仲間達が顔が浮かんでくる。
櫂のことを一人にしてしまうかもしれない、でも彼には仲間達もいるから、アイチ一人がいなくなっても大丈夫。




ただ優しく、自分の死が伝わればいいとゆっくりと瞼が降りていくと同時に。
アイチの心臓の鼓動は止まった。















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