元立凪ビル、現在はセラという新たな人間がビルを買い取った
リンクジョーカー事件後の、重苦しい邪悪なオーラが今でも色濃く残っているのを感じる。

「此処にアイチが・・」
櫂はビルを見上げる。
リバースした後も何度か出入りをしていて、ナオキとミサキもコーリンの引っ越しで出入りしたことがあったと聞いたが
改築されて中の構造は変わっているかもしれない。

「とにかく行こうぜ!!そしてアイチを助け・・・るのでいいんだよな?」
思わずナオキは三和達に目的の確認。
テツ曰くアイチは自分の意志で彼らを止めるために留まっており、助けるというのは違うのではとちらりと彼を見た。

「アイチのところへ行く、目的はシンプルで良い」
「おっ・・・おう、そうだなよ!!行くぞ!」
明かりはついているのに人の気配のない建物。
レオンの話によれば、屋上の月の宮という場所にアイチはいるという。

エレベーターをミサキが見つけ、中に乗り込む。

「なんか、空気が重い感じしねーか・・・」
三和はこれならお化け屋敷の方がマシだと
今更怖気づくような発言をしていたが、確かにミサキも同じものを感じていた。

「そうだね、・・・・アタシ、前にも似たようなものを感じたような」
記憶に間違いがなければ、アイチを追って立凪ビルに入った時のぞわっとする感覚に似ている。
しかしリンクジョーカーはすでにこの世には存在しないクランの・・・はずだと次々に浮かぶ、悪い予感をひたすらに消していた。





アイチの持っていたデッキ全てが床に散らばる。
仰向けになる形でアイチは床に倒れていく、ガイヤールからすれば櫂に勝った歓喜の瞬間だった。

「ふっ・・ふふ・・・ははははっ!!勝った、僕は勝ったんだ!!
櫂トシキに、最強のファイターにこれでっ・・僕はアイチさんの騎士になれる!」

喜びのあまり高笑いをするガイヤール。
傷ついたアイチ、櫂に近づくとブラスター・ブレード・探索者のカードがあった。

(これがアイチさんと櫂トシキを縛り付けている鎖なら)
それを手に取ると、何の迷いもなく真っ二つに破り捨てようとする。
これがなくなればアイチはガイヤールにだけ頼り、彼だけが守れる騎士となれるはずだと力を込めた時だった。


『青き炎を纏いし騎士、オリビエ・ガイヤール!』
頭の中に誰かの声が響いた。
持っていたカードを床に落とし、両手で頭を抱えて中腰になる。

『目を覚ませ、貴殿の守りたかった者を!』
「何を・・・言って・・・」

苦しそうに目を開けながら、これも櫂の怨念かと耳を傾けまいとするが頭の中に現れたのはブラスター・ブレード・探索者だ。
彼は射抜くような目でガイヤールを見つめている。

『制裁を下したのは、本当に櫂トシキか?』
心臓が大きく脈打つような音が聞こえると、ガイヤールの頭痛も収まった。
最後まで恐ろしい男だと顔を上げた時、櫂に見えていたはずのアイチが


元の、本来の姿へと戻っていた・・・・ガイヤールは正気に戻ることができた。


「アイチ・・・・さん?」

傷付いて床に倒れているアイチ、おかしい倒れていたの櫂のはず。
しかし、最初に櫂は倒した、何度も目を覚めとわけのわからないことを言っていたが、よく思い出してみれば

あれは・・・ネーヴだったのではないか?


「どうしてっ・・ネーヴを僕が?」
友人にして同じカトルナイツが、どうして櫂に見えていたのか。
ということは、さっきまでファイトしていたのは櫂ではなくアイチ、そしてアイチに容赦なくジャッジメントを下したのは



ガイヤールだ。




「あっ・・・・・あああっ・・・・アイチさんっ!!アイチさんっ・・・しっかりしてください!!」
何度も震える手で身体を揺さぶるが反応はない、それどころか顔色が悪くなる一方だ。
まさかと胸に耳を当ててると心臓の音がしない。

「僕が・・・アイチさんを・・・殺し・・・た・・・・?」

アイチの瞳から一筋の涙がこぼれた。
その涙と共にアイチは薄暗い闇へと落ちていくを感じる、一枚のカードがそんなアイチに近づいてくる。


『ありがとう・・・ブラスター・ブレード・・ガイヤール君を解放してくれて』
『・・・貴方も救いたかった、クレイを幾度となく救ってくれた貴方を』

『そんなことないよ、いつも助けてもらっていたのは僕の方だから・・・・ガイヤール君、どうか悲しませないで・・・僕が悪いんだ・・・』


もっと早く決断していればよかったのに、両者を傷つけないで解決できればと都合のいい方法探して
見つかるわけがないのに、非情になれないアイチが愚かだったと。

『いいのですよ、貴方は・・・ずっと苦しかったんですね・・』
ふわりっと小さな蛍の光になって、アイチの手の中に戻っていく。
たとえ闇に落ちても、アイチの傍にいよう、もう何もできなくてもいい・・・ただアイチをもう一人にはしたくない。


とても眠くなってしまった、まだやり残したことがあるのに
しかし意識は下へと落ちていく中で薄くなっていく・・・・そのままアイチは闇の奥へと姿を消した。










ガイヤール達に何が起こったかなど知らず、ラティは一人アイチを探していた。
でも、何処かがおかしいと歩いているうちに異変に気付く、誰もアイチの部屋の扉が破壊されたというのに騒いでいないことを。

沢山いた傭兵達の姿も一人も見ていないこと、夜なのだからとも考えたが一人くらいに会ってもいいはず。

「うーん、アイチ君何処にいるんだろう?」
もしかしてアイチが自分の力で人に出たのでは?ドーナツがどうしても食べたくなって力任せに扉を開けたのではとも
考えつつ歩いていると、ラティの前にセラが現れた。


「あれ?セラ」
「此処にいましたか、ラティ」

いつもと同じセラ、なのに何処か違和感があり近づくことができない。
本能的に感じているのだろうと、セラは瞳を細くさせる。

「ねぇ、アイチ君見なかった?まぁ・・ガイヤールかネーヴでもいいや、二人ならアイチ君の居場所を知ってそうだから」
「アイチ様ですか、残念ですね。



彼は今、死にました。ガイヤールの手によって」



一瞬セラが何を言っているのか理解できなかった。
アイチが死んだ、ガイヤールの手によって、気に入らない目でいつも見ているガイヤールだがアイチのことは慕っているのわかる。

その彼がどうしてアイチを手に掛ける理由などない。

「ふざけないでよ、どうしてアイチ君が・・」
「事実ですよ、ガイヤールは己の憎しみで我を見失いネーヴ、そして止めようとしたアイチ様も倒してしまった。

残るのはカトルナイツは貴方だけですよ」

セラだって同じカトルナイツのはずなのに、まるでセラは最初からカトルナイツでもなんでもないような言い方。
わけがわからずにいるとセラは顎に手を当てて、考え始めた。

「此処まで言ってもわからないとは・・今まで何も知らずに能天気に過ごしていた貴方のために説明しましょう。
カトルナイツのオーナー、それは私だったということ、内部からの方がいろいろと都合もよかったですしね。

それと、カトルナイツのプリズンの力の回収のため・・ラティ、貴方には此処で消えてもらう」

馬鹿にするかのような物言いをされ、セラは本当は内心そういう目でラティを見ていたことが分かった。
もうカトルナイツは必要ないのでプリズンの力を返せと、一方的に言ってきたことに、ラティは腹が立つ。

「今まで皆を騙してきたの、酷い!」
「それを貴方が言いますか?」

「・・・・どういう意味なの・・?」
まるでラティがセラと同種の人間のような言い方だ。

セラのペースに乗せられてはいけない、セラがガイヤールを唆してアイチとネーヴを倒したらしいが
黒幕のセラを此処で返り討ちにしてしまえばいい。

「もういい!!セラのこと、仲間だと思っていたのに、こんなことして絶対に許さない!!」
怒りを表しにして、片足を大きく地面に叩き付けるように一歩前に出すとラティはプリズンを展開。

「フェアリー・マスカレード・プリズン!!」
草木が生い茂り、辺りには森林のジャングルに似た神秘的な場所へと変化。
これてセラは逃げることも助けを呼ぶこともできない、ラティが勝てさえすれば話は簡単に解決できる。

操られていたガイヤールもどうなったかわからない、アイチもネーヴも倒れて無傷なのはラティだけ・・自分が確実に、絶対に勝たなければ
初めてのしかかるプレッシャー、今まで自由に楽しくファイトしてきたラティにとって初めての経験だ。

「手が震えてますよ」
「うるさいわね!!ほっといて・・・・よくも皆を騙して・・・」

「騙してと、何度も言いますけど・・・貴女だって周りを騙していたじゃないですか?」

えっ?と言う前にファーストヴァンガードを互いにコール。

ラティはシャドウパラディン、夜宴の魔女 リラに対し
セラはリンクジョーカー、星輝兵 ワールドライン・ドラゴンをコール、不気味な白いドラゴンをしている。

「リンクジョーカー・・・どうして!」
「驚くことはありませんよ、このプリズンも同じ・・・貴女なら名前は聞いているでしょうヴォイド、彼らからもらったシードを元にして作ったのか、このプリズンなのですから」

あまりの衝撃にラティは手札を落としそうになった。
この不思議な力はクレイがくれたものだと信じていたのに、ヴォイドと同じ邪悪な力を知らされずに使っていたこととなる。

「今の私には、こんなこともできるんですよ!!」
パチンッと指を鳴らすと、ラティのプリズンが上書きをされて、宇宙空間へと変化してくい。
上も下もない、暗い宇宙空間で手元のファイトテーブルも赤い淡く発光するプレートへと変わっていた。

「どうしてリンクジョーカーの力を、あいつらは危険なんだよ!セラだって知っているでしょ!!」
思い出すのはあの時のこと、空に大きなリングが現れて、街の人々が操られて
背後に父を守りながらファイトをした時の事を、セラとてあの一件でわかったはずではないのか?

「確かに恐ろしい力でした、しかし・・・・脅威な力ほど手にしたいと考える。
己のモノにすれば、敵などいないと、既遂のリンクジョーカーのクランを持っているのは一握りのみ、しかも先導アイチ一人に倒されるなど

私なら、もっと上手く使ってみせる!その力で、世界最強の先導者となってみせるのだ!!」

本性を現したセラにラティは絶句、あのいつも穏やかだったセラの姿は仮面だったのだと知る。

そしてセラのターンとなり、グレード2へのライドが可能となる。
閃銃の星輝兵 オスミウムがラティのヴァンガードにアタックが成功、そして・・・。


「貴方のカードを一枚、ロック!」
「!!」

リアカードの誘致の魔女 アルドラをロックされて、黒いリングにカードとなって囚われの姿と化す。
リバースファイターとはファイトはしたが、リンクジョーカーを使うファイターと戦うのは初めてだったが

セラのペースに惑わされてはいけないと気を引き締める。

「そしてアタック!」
続いてのアタックでは、ロックは使われずに済んだとこちらのターンが終わるまでロックは解除されない。
リアガードなしでセラにアタックするが、ロックされるユニットが増える前に終わらせなければ。

「さすがに冷静ですね、闇の魔女のクランを使うだけあってそちらの方面には耐性があるようです。
どうです?私の家臣にでもしてあげてもいいですよ、実力だけなら貴方は高評価を差し上げてますから」
「お断りよ、誰がセラなんかの部下になるものですかっ・・・・!!ときめく魔法はチャームなパワー!すてきな幻、ごらんあれ!

ライド、幻惑の魔女 フィアナ!!」

クリーム色の髪をした魔女がライドされる、
荒廃の魔女スカーハのアタックがヒットしたことにより、フィアナのパワープラス3000。

セラのダメージゾーンにカードが2枚落ちる。
しかしリアガードがロックされており、ラティがアタックできたのは二回だけ・・悔しそうにターンを終了した。


「私のドロー、貴方は確かに最初家臣にしたかったですが・・アイチ様が貴方に余計入れ知恵をしたおかげでつまらないファイターになりましたね。
昔の無知で、愚かな貴方が好きだったのに・・・残念です」

まさかセラまで、ラティを馬鹿にするとは思いもしなかった。
散々周りとガイヤール・ネーヴにも似たような目で見られて、セラとアイチだけはラティを理解していると信じていたの。

「闇に響くは静寂の音色。 刻め、絶望に誘う破滅の舞踏!星輝兵 ヴェノムダンサーにライド!」
現れたのはあまりにも巨大なユニット、
背後に巨大なリングを背負い、白いボディと身体の一部には目が描れている。

「カウンタープラスト、ロック!」
今度はスカーハをロックされてしまう。
ヴェノムダンサーのアタックを防ぎきれずに、ラティのダメージは5枚目・・・追い詰められた。

最後のアタックはどうにか守りきれ、セラのターンが終了し、ラティはレギオンを発動させようとする。
このファイトに勝てば片が付く、負けるわけにはいけないと精神統一するように目を閉じ・・セラの言葉に惑わされないようファイトに集中。

「古より伝わる、魔法の力!心を揺さぶり、惑わせ、魅了しちゃえ! 現の魔女 ファムのレギオン!」
姉妹のユニットによるレギオン、これを見た時のアイチとの話を思い出した。
アイチはラティを「さん」づけして呼んでいたが、アイチに強く希望して名前呼んでとお願いしたのだ。

恥ずかしそうに名前を呼んでくれてうれしかった、月の宮で過ごした時のこと楽しかった。
それを壊したセラを許せないと怒りがこみ上げてくる!!

「セラなんて嫌い・・・!!大っ嫌いだ!!」
リアガードのアタックだが、セラはガードしてしまう。
守りつつセラは感情を爆発させるラティに対し、無表情のままに。

「私も嫌いですよ。ドーナツなんて甘いもの虫唾が走るほど嫌いでした。でも・・同じ甘さでも・・・彼の甘さは好きです」
それがどういう意味なのか、ラティは考えもせず、このターンでセラを倒そうと攻める。

「レギオンスキル、グレート0になっちゃえ!!ぱんにゃらら~」
セラの左右のユニットが強制的にグレード0のカードに入れ替えられ、
箒星の魔女 マニサをリアガードに新たに入れ替え、そのアタックも成功したため、パワープラス2000。


「頑張りますね、でも貴方は誰のため・・何のために今、私に勝とうとしているのですか?」


誰のため、それはアイチのため、おまけにネーヴとガイヤールの仇打ちのためだ。
それに不思議な力だと偽って、ヴォイドの力まで使わせるなんて、酷過ぎると叫ぶが。

「私はヒントはあげましたけど、貴方は言われないと気づかないタイプのようですね・・。
酷い仕打ちをしたのは私よりもむしろ貴方の方ですよ、ラティ・カーティ」
「何をしたっていうの、私・・何もしてない・・・ただ、仕事をしただけ」

とある国で店でドーナツを食べていると、セラ(オーナー)が話しかけてきて有能なファイターを探していて、日本に来てほしいという依頼だった。
ファイターの中で日本は一度は行ってみたい国で、仕事の内容も悪事を働いたファイターに裁きを下すということ

悪いことした奴らをころしめていただけだ。
別に悪いことなんて、していないと胸を張っていえる。



セラに、言われるまでは。



















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