「おわっ!あちちちっ!!」
あまりの熱さのあまりカムイが後ろへと下がる。
熱さのあまり思わず目を瞑るチームメイト達に対し、レオンとレンはそのファイトを一瞬たりとも見逃さぬように目に焼き付けていた。

「渦巻く煉獄の炎で、荒ぶる魂を焼き払え!トリニティ・クリムゾンフレイム!」
二体のドラゴンを取り巻く炎がセラのユニットめがけて突進するように向かっていく。

「ワン!」
櫂の掛け声と共にリアガードのコロニーメイカーを燃やし尽くす。

「ツー!」
もう一体、ストロングホールドも同じく、灰も残らぬほどに燃やす。
起動能力だけでリアガードを退却させられる、

「そして3つ目の炎・・・クリムゾンフレイム!!」
「チッ・・・ですが。私には!」
このシードの力がある、山札の中からヒールトリガーを引き寄せた。
悔しそうにしている三和達だが。

「無駄だ・・・」
櫂が、そう言うとカードが炎に包まれる。

「何っ!!」
熱さのあまりカードから手を離すと、ダメージゾーンへと落ちる。
トリガー効果を無効にする力、ハッと顔を上げるとそこにドラゴンがいると思えるほどのプレッシャーを感じた。

「魔竜聖母 ジョカがブーストし、アタック!」
ドロップゾーンに置かれたことにより、パワープラス3000となり、合計パワー9000となりヴァンガードにアタックをする。
舌打ちをしたセラ、だが悔しがっている暇などない。

「咆えろ!ボーテックス・ドラゴニュート、ワールウインド・ドラゴン!レギオンアタック!」
「・・・ノーガード」
手札を捨ててまで、ガードする必要などない。
セラには力がある。ブーストされた櫂のレギオンがイマジナリープレーン・ドラゴンに煉獄の咆哮をぶつける。

「チェック・ザ・ドライブトリガー、一枚目・・・二枚目ゲット、クルティカルトリガー」
「ダメージ・チェック・・・・!」

赤い炎に苦しむように声を上げるイマジナリープレーン・ドラゴン。
ヒールトリガーを引き寄せるように山札を引いたが二枚とも、トリガーなしのカードだった。

「やった、トリガーはねーぞ!」
純粋に喜ぶカムイ、しかし妙だ。
ダメージはすでに5枚、クリムゾンフレイムによってヴァンガードへダメージ1枚にリアガードを失っており、それでもトリガーを引き寄せなかった。

「まさか・・・まさかだけどさ、あいつ山札を操作できなくなったんじゃねーのか?」
ふと、ナオキがそんなことを言いだした。
櫂とのファイトは他の者と同じのはず、シードの力を無効にするほどの力を櫂は持っているというのか?

(可能性は、なくはないですね)
実際、櫂の周りにはPSYクオリアに覚醒したアイチとレンがいる。
レン自身は櫂に感化されて、力に目覚めた、アイチも同じ強い力を求めるように先導されていた。

リバースし、PSYクオリアを覚醒させたが、櫂が持っているのはそれをも超えた力ではないのかとレンは考えている。


「煉獄闘士 マレイセイの自身がブーストし、アタック!」
「ガード!」
さすがに焦ったのか、ジョカと同じくドロップゾーンにカードが置かれたことでパワーがブーストしたマレイセイのアタックは防いだ。

(やはり櫂トシキ、アイチ様が執着する相手なだけはありますね・・しかし!)

セラのターンとなり、ドローし、一枚カードを引く。

「闇に響くは静寂の音色。 刻め、絶望に誘う破滅の舞踏!星輝兵 ヴェノムダンサーにライド!さらに、レギオン!」
ネーヴに支えられて、ガイヤールは体を起こした。
自分もやられた自動能力でリアガードをスタンドできるユニット。

シード4つ、全てを手に入れ、ヴェノムダンサーがライドしただけで寒気が漂ってきた。
普通に肌寒いのではない、圧倒的な虚無の力に恐怖する寒さだ、感じ取ったジリアンは怯えており、シャーリーンも同じように自然と体が後ろへと下がる。

櫂は目を僅かに細めるだけで、動じてはいない。

「これが私のファイナルターンです!!いきますよ、櫂トシキ!!」
「・・・・・」

連続アタックにリアガードを削られてしまい、ヴァンガードのアタックではヒールトリガーによって救われたが
予想通り、再スタンドをされてしまう。

「無双の星輝兵 ラドンのアタック!」
「ノーガード!」

もう手札は三枚だけとなった櫂。
セラは完全ガードを2枚も持っている。

「敵が優勢すぎる、こんなっ・・・!」
アサカは神のように崇拝するレンまでも負け、櫂もアサカから見れば絶体絶命。
もう見てはいられないと目を背けようとすると隣にいたレンが話しかけてきた。

「大丈夫ですよ、アサカ。だって櫂が負けるとしたら僕かアイチ君ぐらいですよ。
それに、あの男はまだ完全に気づいていない、櫂の本当の力を、だから一緒に見ましょう」

傷ついているのに、笑顔でレンはアサカを観戦に誘う。
もっと強ければ、力があればレンの仇だって取れたはずなの、櫂やアイチ、レオンと同じ力が欲しいと何度願ったことか。
でも、力を手に入れれば競い合うライバルになってしまい、仲間にはなれないのかもしれない。

だから、アサカは今のまま、己の力を他人を妬み、嫉妬せず、高めていけばいいとレンに教えられた気がした。


なんとなく、だけれども。
背けていた顔をレンと同じく、前へと向ける、もう恐れはなかった。


「時間も空間も無い漆黒の闇よ、夢幻の中で永遠に彷徨え!レギオンアタック!」
櫂のダメージは5枚目、これだけは防がなければとヴァンガードサークルに出したのは、ドラゴンナイト ギーメル。

「よっしゃ!クィンテットウォールだ!」
思わずガッツポーズをする三和。

山札から素早く5枚のカードが展開されてる、幸運なことに全てがグレード2以下。
トリガーさえ、出なければ防げる。

セラはファイナルターンと予告をした、これは絶対だ。
手に汗握りつつ、セラのトリガーチェックを待つカムイ達。

「・・・ドライブトリガー、チェック・・ゲット、クルティカルトリガー!」
笑みを浮かべて、櫂を見るセラ。


「くっ・・・ーー!」
「まだだ、二枚目がこなければ突破はされないわ!」
ナオキが悔しそうにしていると、ミサキまだ望みがある。
そう言われて、ナオキはまだ櫂は諦めていない目であることがわかった。

「二枚目・・・・・!」
確かにトリガーではあったが、ドロートリガーだった。
悔しそうにまだアタックの終わっていないリアガードにパワーを与える。

「アタックだ!」
禁忌の星輝兵 ルビジウムがノーガードの櫂の横をすり抜け、ボーテックス・ドラゴニュート、ワールウインド・ドラゴンにアタックをする。

アタックが終わり、戻ってきたルビジウムの様子がおかしいとセラが気づいた。
恐れを知らないはずが、動揺し、震えている。

(山札が先ほどから、動せないのと何か関係があるのか?・・・あの男はシードの力を超えた何かがあると!)

焦ったように、山札が自由に動かせないことに気付いたセラには、櫂を見た。
正面から見ていたが、不審な動きはない、普通にファイトをしている。

「どうした?山札を動かせなったから焦っているのか?公平なファイトになっただけだろう。
これが力に頼ったものの結果だ、真のファイターの強さとは心の強さだ。

レギオンとは、クレイが地球に恩返しにと教えてくれた。
一人では戦えない、二人でなら、人は一人では生きてはいけないのだと教えるためのスキルだ!」

まるでクレイから教えてもらったかのような言葉。
櫂に対する復讐として生まれたのではない、きっと櫂や此処にいる皆に共に一人ではないと伝えるためだったのだと。

「そして、これが俺の分身、レギオンだ!」
山札から、一枚引くとそのままライドさせようとする。

「煉獄の灼熱に焼かれ、幾度も蘇る帝国の竜王よ!
炎の中で奮い立て、俺の分身!煉獄皇竜 ドラゴニック・オーバーロード・ザ・グレート!!」

以前使っていた櫂のドラゴニック・オーバーロードのもう一つの姿。
その手には剣はないが、力強い紅色の肉体と大き翼を広げる。

「全てを焼き尽くす炎獄の炎の中で、新たに生まれ立つ炎の化身よ!煉獄竜 ドラゴニック・ネオフレイム!!

レギオン!!」



降臨したのは、カムイ曰く「ムカデみたいな」なフレイムドラゴン。
しかし、ネオフレイムはドラゴンではなく、オーバーロード・ザ・グレートから溢れ出た魔力の突然変異で現れた存在。

「これが、あの時に櫂が生み出した新たなドラゴニック・オーバーロード・・」
レンとのファイトの時、カードが突然輝くと二枚に分裂して一枚は山札へ。
そして、横に続く絵に変化していることで櫂はレギオンを得たのだと、手を翳し彼は言った「シーク・ザ・メイト」と。




「煉獄竜 ペタルフレア・ドラコキッドのアタック!成功した場合、相手のリアガードを退却させる!」
一見可愛らしいドラゴンが、アタックに成功し、リアガードがドロップゾーンへ。

「煉獄の使者と、燃え上がる炎!熱き二匹の竜の前には、如何なる壁も意味を成さない!!レギオンアタック!!」
「たとえ、シードの力を無効化されようとも!!完全ガードです!!」

トリガーは自由に引き寄せられなくなったが、セラにはこれがある。
それに元々セラは南米サーキットのチャンピョンにもなっている、その実力だけでも櫂には勝てるのでは?

「チェック・ザ・ドライブトリガー・・・」
一枚目、二枚目共にトリガーなし。
皆に落胆の色が見えていた、リアガードであってもダメージは与えられない。

最後のリアガード、煉獄竜 ワールウインド・ドラゴンのアタックが終わり、櫂のターンは間もなく終了すると同時に櫂が笑みを浮かべる。

それを見た三和は「わ・・悪い顔だ・・・!」だと嫌な予感と同時に、勝利へ光炎が見えた。


「オーバーロードよ、ネオフレイムよ、再び立ち上がれ!煉獄の炎をもって、仇なす敵を薙ぎ払え!スタンド!」
手札二枚はそのために残していた、その手には完全ガードが一枚含まれており
未練なくドロップゾーンへ、カウンタープラストにより、再スタンドされる。

「私はっ・・・・貴方達がやっていたぬるま湯のようなファイトとは違う!!」
最後の完全ガードを取り出してきたセラ。
勝ては、富に得られ。敗れば、全てを失う・・・人生を賭けていたファイト。

チームなど一度も組んだことなどない。南米サーキットも雇ったファイターと参加し、個人部では彼らはあっさりと敗北していた。
強ければ、誰もいらない。
友人など裏切るリスク背負うだけ、家族すらも簡単に裏切る家系で育ったセラならば当然の価値観だ。

「何が違う、己の全てを出し切り、信念を持ってして誰もがファイトをこの場にいる全員が経験している。
それに力の強さは関係などない、ぬるま湯などと馬鹿にするなど、俺が許さん!!」

まさか櫂に、そんなことを言われるなどほとんど話もしていなかったジリアン達とアサカは
櫂は自分達のファイトをちゃんと見てくれていたのだと、驚いていた。

「裏切るような人間しかないと他人を罵る、それはお前が人を裏切り続けてきた証。
お前が変わらないかぎり、人も!仲間も!集まりはしない!!」

「黙れっ!!」

そんなものは認めない。認めてなるものか!
ドライブトリガーチェックをする櫂、レンはPSYクオリアを使わずとも流れはすでに完全に櫂であるものだとわかった。

一枚目、二枚目共にクルティカルトリガー。
光輝く二枚のカードはまるで、黄金のように輝いている。

「アイチの魂、返してもらう!!煉獄の炎をもって、仇なす敵を薙ぎ払え!!」
意志を貫く強さを感じた櫂の瞳、それは虚無に落ちた時とは違う。
透き通るも、まっすぐでいて強い光だ。

無意識に胸を手で握るセラ。
やっと手に入れたアイチの魂を逃がして渡してなるものかと、櫂に渡すぐらいなら握りつぶそうとした時だった。


アイチが背を向けて、誰かと楽しそうにファイトをしている。
小さな男の子のようだ、楽しそうに足をばたつかせている、彼らの後ろにセラは立っていた。

『楽しかった?』
『はい、とっても楽しかったです。またファイトしませんか?アイチ様』

優しく幼いセラの頭を撫でると、気持ちよさそうに目を瞑り笑顔を浮かべる。
幼いセラは手をデッキを胸に抱えて、手を振って去っていくとアイチだけが残された。

「アイチ様・・・・」
『セラさん・・・』

ゆっくりとアイチが振り向いた。
とても悲しそうな顔をしている、今にも涙がこぼれてきそうな苦しそうな顔だ。

『貴方は、ただ・・・』
「私の心を見たのですか!!あんなものは・・・!!」

固く目を瞑り否定していたが、目を開けるとアイチがすぐ目の前にいた。
小さなその手で、セラの頬に触れる。

セラも、震える手でアイチの頬に手を伸ばす。
やっとやっと、手の届くところに来たのだ。月の宮に閉じ込めて、優しい心を蝕ませて陥れるはずだったのに

優しい光に包まれたアイチを、セラはいつだって影から見ていた。
躊躇いもなく共に光の中にいるラティやガイヤールに嫉妬して。


でも、今なら同じ闇の中にいる。
怖くなどない・・・あと少しで触れるはずだった。



「大罪人を煉獄の炎を持って、焼き尽くせ!!ジャッジメント!!」
「ぐあああっ!!」


シードはジャッジメントの力を持って、燃やし尽くされて消えていく。
アイチの魂も自由となり、セラが触れようと手を伸ばすがアイチは首を横に振る。

「今度は、本当の貴方が触れにくればいい」


また会える、今度は現実で。
そういうとアイチはセラの中から消えていった。















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